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〈どうなの?共同生活は〉
突然かかってきた母からの電話。
近況を尋ねてきたかと思えば、少し話し込んだ後にそう切り出され、真っ先に聞かれなかった辺り思ったよりも心配されていなかったんだなと思った。
私からの連絡が一切なかったことで、もしかしたらある程度は上手くやれているとわかっていたのかもしれない。
「…思ってたよりも快適でびっくりしてる」
〈ほら。合うかもって言ったじゃない〉
「いや、あのときは絶対適当だったでしょ」
〈そんなことより、新しい家は見つかったの?〉
ぎくりと心が変な音を立てた。
最早、家を出たいとは一切思っていない自分に、若干の居心地の悪さを感じる。
誤魔化すようにテレビの電源を消して、ソファに深く座って膝を抱えた。視界に入るペディキュアを触りながら、ひとつ息を吐く。
「新しい家なんて全然探せてないよ」
〈無理に探さなくてもいいんじゃないの?〉
「うん、わかってる。大丈夫だって」
〈一緒に住んでくれてた方が安心だからね〉
「うん、迷惑はかけないようにするから」
〈そうよ。気をつけなさいね。今度お父さんにも会いに来てあげて〉
「はーい。またね」
スマホを耳から離して、終話ボタンをタップする。
お父さんに会いに、か。具体的な予定はまだないけれど、何となくスケジュールアプリを眺めた。
「なあ…今のどういうこと?新しい家ってなに?何の話?」
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作者名:こま | 作成日時:2021年10月31日 14時