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「なーんか盛り上がってない?何話してるん?」
「あ、坂田やん。丁度良かった、もうすぐできんで」
ひょっこりと顔を出した坂田くん(弟)に、センラくんと揃ってそっちを見た。
材料は全て投入済みだったので、完全に井戸端会議状態。話の上手いセンラくんと話していると、自分も話し上手になった気がしてつい沢山話してしまった。
盛り上がりすぎただろうか。
「うるさかった?それともお腹空いた?飲み物先に持って行こうか」
「んー」
何時になく真面目な顔をしているからか、どことなくピリとした雰囲気を坂田くん(弟)から感じて、早々に話を切り上げる。
気のせいかもしれないし、考えすぎかも知れない。それでも、ちょっとでも居心地の悪さを感じる雰囲気は嫌だった。
「何飲む?」
「Aはどうすんの?」
テーブルに置かれているウイスキーの瓶を見て、冷蔵庫を開ける。正直、ウイスキーはあまり得意ではない。
「うーん、あ、ビールある!私ビールにしよ〜。センラくんは?」
「Aちゃんビールにするん?やったら、俺も最初はビールにしますわ」
「わ、付き合いいいですねセンラくん!私、うらたさんと志麻さんにも聞いてくるね」
きっと鍋の準備ができれば、坂田くん(弟)も元気に戻るだろう。二人を残してキッチンから離れた。
「…なんやねん」
「別に。楽しそうに話しとったなーって」
「うらたさん、志麻さん、もうすぐお鍋できますけど、飲み物どうしますか?」
「俺、アルコール飲めないから、お茶もらっていいっすか」
「コーラとかもありますけど、お茶で大丈夫ですか?」
「え、ありがとう。大丈夫です」
何故か戸惑った様子のうらたさんによくわからないお礼を言われた。何がありがとうなのかよく分からないけれど、うらたさんはお茶で大丈夫そうだ。
「志麻さんは?」
「あーセンラ何飲むって言うてました?」
「センラくんはビールにするそうです」
「じゃあ、俺もそれで」
志麻さんはビール。
じゃあ持ってきますねと声をかけて、早々にリビングを出た。正直、緊張する。距離感が手探りすぎて、坂田くん(弟)がいないと息が詰まりそうだ。
少し駆け足で逃げるようにキッチンへと向かった。
「…優しい、お姉ちゃんじゃない?アルコール飲めなくても無理に勧めたりしないし」
「それはそうやけど、坂田も言うてたけどうらたさんの理想みたいな姉はおらんよ」
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作者名:こま | 作成日時:2021年10月31日 14時