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「楽しそうやん、何だかんだ」
苦労しそうやなって思ったけど。とセンラは続ける。
「まあ、楽しいよ。一応、Aにはもう仕事のことは言うてんけど、反応もそんななかったし、多分調べたりせんタイプやろうし。あ、弟をよろしくお願いしますって言うてたわ」
「めっちゃ良いお姉ちゃんじゃん!いいなあ、坂田」
「いや、言っとくけどクッキー焼いたりせんし、うらさんの理想みたいな姉じゃないで」
Aのために念を押して言っておく。悪いことではないやろうけど、ハードル上げたとか言われても嫌やし。
いやまあ、Aと会う機会とかそうそうないやろうけどな。
「えー今度は坂田の家で鍋だな」
「うらたん、坂田のお姉ちゃん見たすぎやろ」
「ノリが学生やん!」
と、思ったけど、雲行きが怪しい。
会わせたくないとかやないけど、予想してへんかった方向に話が進んで、慌ててそれらしい理由を考える。
「いや、俺ん家鍋の道具とか…あ。」
「え、なに急に。どうしてん」
「…そういえばコンロに土鍋置いてあったわ。多分Aや」
「いやタイミング」
「ドラ〇もんやん」
「人の姉にドラ〇もんってなんやねん」
便利な猫型ロボット扱いすな。
結局、3対1では勝てるはずもなく、時間ができたらというていで押し切られた。
通話を終えてリビングに向かうと、Aは変わらずソファでテレビを見ていた。
「なあ、A?」
「あれ、お疲れ。終わったの?」
「んー終わった」
隣に並ぶようにソファに座って、テレビに視線を戻したAの横顔をちらりと伺う。
テーブルに置いてあるマグカップに手を伸ばすのが見えて、今やとばかりに口を開いた。
「今日じゃないんやけどさ、近いうち鍋せん?」
「え、最高、やろう。寒くなってきたしね〜」
「即答やん。メンバーも来たいって言うとるんやけど、呼んでもええ?」
「前に言ってたグループのメンバー?え、それ、私がいると迷惑じゃない?」
「自分の家やねんからおるに決まっとるのに、迷惑なわけないやん」
「そう?迷惑じゃないならいいんだけど、私が人見知り発揮して猫かぶりしててもつっこまないでね」
「A人見知りなん?嘘やろ」
それから会話は止まることなく、すっかりテレビのことを忘れて話し込んでしまって、気づいたら画面はエンディング。
あ…ドラマ忘れてた。ってAがまた照れた顔で笑うから、つい話し込んでまうよね。と同じように笑った。
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作者名:こま | 作成日時:2021年10月31日 14時