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景瑚の腕の中は
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優しくて、とてもとても温かかった。
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｢……じゃあ、先帰るね？」
景瑚｢…ん？あ、うん。気を付けてね？」
｢分かってるよ(笑)ありがとう」
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あれから私は景瑚の胸の中で暫く子供みたいに泣きじゃくって、少ししたら本当に景瑚は私を家まで送ってくれた。
帰り際に、景瑚は私の頬についた涙の後を｢きったないなあ｣なんて笑いながら親指で拭ってくれて
｢また明日ね｣と。
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見たことないくらい優しい表情で、そう言った。
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そして、あの日から数日。
私は白岩さんに会うのを避けて、いつもの帰り道と違う帰り道をくぐり抜けて夜の街を歩いていた。
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…もう会えない。会ってはいけない。
会ったらまた傷付くだけだ。
もう、忘れようと私の中ではちゃんと気持ちの整理はついていた。
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｢……あ、やば」
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早く帰ってご飯ご飯と、今日の夜ご飯のことを考えながらスマホを触っていると
地面の穴に引っかかった足。
え？と下を見るとヒールが挟まっていて身動きが取れない。
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嘘でしょ…と辺りを見渡す。
よし、誰もいない。今のうちに取らなきゃ。
そう思いとりあえず挟まった方のヒールから足を抜いて
うーん！！と両手でヒールを引っ張ってみる。
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だけど、それは想像以上に固くて全くヒールは動いてくれない。
どうしよう、どうしよう。
焦りながらスマホでLINEを開いてみたけど、……さすがに景瑚にも言いづらいし…友達もまだ仕事だろうし…と諦めてLINEを閉じる。
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うぅ……と、落胆していた時だった。
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ヒールを引っこ抜こうとヒールを掴んだ私の手に重なった、綺麗な手。
そしてその手が、私の手をヒールからどけて
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いとも簡単に、私の黒く汚れたヒールを抜き取った。
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作者名：カスミ | 作成日時：2022年6月8日 23時
