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体育館の空気は好きだ。少し切なくもなるが、端に座って忙しなく動いている同級生たちを見ていると、胸が暖かくなる。たまに飛んでくるバドミントンのはねを返しながら、隣の男子コートを見た。バスケットボールをしている。
｢あれ、紬さんサボり？｣
ボールを拾いに来た山口が声をかけてくる。
｢ううん、人数合わなかったから。手首捻ったって理由で見学｣
大体五月の授業まではミーティングというか、遊び半分で交流を深めるものが多いのだ。女子体育を担当している先生がバドミントン部の顧問のせいでバドミントンをしているが、成績には入らないので見学させてもらった。見学という名のサボりなので山口も間違ってはいない。
｢そうなんだ、相変わらずだね｣
｢まぁ、手首捻ったらしょうがないよね｣
わざとらしく言う紬に、山口が声を上げて笑う。一息ついてからお大事に、と微笑んで帰っていった。
山口が帰ってから、紬は女子を見渡す。髪色は明るかったり暗かったりで色々だが、一人だけ月島と同じ髪色をした生徒がいた。星の髪留めをつけていて可愛らしい。たしか、隣のクラスだったような気がする。
不思議と目を引く彼女をしばらく見ていると、おっちょこちょいなことが分かった。挙動不審であったり、一喜一憂が激しい。感情表現が豊かで点を取ると飛び跳ねて喜び、まさに“かわいいおんなのこ”だ。
んふふ、と笑みを零して視線を外す。髪が乱れるほど楽しんで動いている女子たちを観察していると、隣から太く大きな声援が聞こえてきて身を小さくする。見ると、バスケ部の男子がスリーポイントシュートを決めたところだった。仲間に囲まれて楽しそうに笑う色素が薄い彼に目を奪われる。
微笑ましい気持ちになっていると月島と目が合った。黄色い瞳に吸い込まれそうになる。少し眦が垂れ下がったかと思うと、サボり魔、と口が動いた。そんな月島に紬は手首をプラプラとする。
｢なに、手首やったの？｣
｢建前上ね｣
顔を顰めて近づいてきた月島があっそ、と言葉を残して去っていく。案外、怒っていないのかもしれない。線が細いのに広い月島の背中を眺めていると集合がかかってしまったので、駆け足で整列した。
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作者名：とっかり | 作成日時：2021年11月28日 6時
