〇 ページ3
・
当然紬も仲良くしてもらっている人のことを悪く言われるのは良い気分になるものではなく、その女子たちの連絡先はブロックした。つまるところ二人の地雷原を踏み荒らしてしまったのだ。
先程の紬に対する態度は過剰反応と思われるかもしれないが、山口の言われようは想像以上に酷かったのだ。月島が山口を大切に思うからこその対応だと紬は知っていたので、素直に反省することにした。
｢……山口を通さないと話せないような奴に用はない｣
いつの間にかヘッドホンに首にかけていた月島が嫌悪感を滲ませて呟く。山口がツッキー……！ と感激の声を上げていた。
｢そういうスタンスで行くんだ｣
｢今までもこういうスタンスだったんだけど。高尚な高嶺の花は誰にも連絡先訊かれなくて楽だねぇ？｣
月島の煽りに見事引っかかった紬は、月島から顔を逸らす。視線の端に見える月島は、ニヤニヤしていて意地の悪そうな表情をしていた。実際意地が悪いのだが。
｢……高嶺の花じゃないし。べつに、ノリについていけないから避けてるだけ｣
｢ツッキー！！ 紬さん拗ねちゃったじゃん！｣
ほっとけば、と鼻で笑って言う月島の肩に、紬は拳を喰らわせた。
なにすんのさ。つきしまが悪い。そんな会話をする二人に、山口は声を上げて笑う。それに釣られて紬と月島も軽く笑みがこぼれてしまった。
｢二人とも部活どうするの？ バレー部？｣
一息ついた後思い出したかのように紬が問うと、月島からまぁね、と無愛想な返事が返ってきた。
｢君は？｣
｢バイト始めたから部活には入らないかな｣
ちなみに駅前のお好み焼き屋さんだよ、と付け足す。
｢へぇ〜！ あのオシャレなとこ？｣
｢そうそう｣
給料はいいし交通費も支給されるのだ。それに加えて週二三時間から入れて客の年齢層も広いと来た。初めてのアルバイトには打って付けだろう。紬は火曜日と木曜日以外の放課後五時間と、土曜日にフルで入っている。訳あって一人暮らしをしている紬だが、生活費は親から振り込まれているので特にお金に困っているということはない。
｢……賄い目当てでしょ｣
つまりはそういう事だ。
＊ ＊ ＊ ＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とっかり | 作成日時：2021年11月28日 6時
