酔 ページ7
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「なぁ、そういやお前、最初の自己紹介のときに”こういう場は慣れてない”って言ってたけど、あんま飲み会とか行かねぇの？」
ふと、疑問に思ったことを口にした。確かに相川はそう言っていたはずだ。
「あぁ...うん、そんなに行かないかな。...合コンとか行っても意味ないし」
「いや、お前狙ってる女子多いと思うぞ。」
そう言うと相川は綺麗な形の眉を寄せながら、苦笑いを見せた。
「僕は、あんまり...恋愛とか興味ないんだ。」
何故か声のトーンを落としてそう言った相川は、酷く心憂いた顔をしていた。
相川のグラスに入っていた氷が、カランと音を立てて動く。
あまり飲まないせいで、氷が溶け酒は薄くなっているように見えた。
相川の容姿なら、学生時代誰かと付き合ったことくらいあるだろう。じゃあその時、辛い思いをしたのか...？
相川の心情を慮ろうとしたが、先の表情が妙に引っかかっていた。
「なるほどな...。
そういやさ、俺最近彼女に振られてて、今日この合コンに来たのはヤケクソみたいな部分もあんだよね...」
自分の事情など毛頭言うつもりはなかったが、酒が進むに連れ、ずっと心にあった鬱屈とした気分を誰かに打ち明けてしまいたくなっていた。
「俺も、もう恋愛はいいや...って思ってる...。」
頭がぐわんとした。
ウイスキーばかりじゃ流石にまずかったか...とぼんやりとした頭の隅で考えた。
「一輝さん？ちょっと大丈夫ですか？」
相川が、完全に酔った俺の肩を叩く。
酔ったわ...＿と温かい肩に寄りかかった。
「ちょっ、一輝さんってば！」
「...動くなよ...。」
俺の頭をどかそうと動く肩に、頬を当てた。人肌が心地よい。
すると肩の動きが止まる。
ゆっくり視線を上げると、少し上から俺を見ていた相川と、目がかち合った。
綺麗な睫毛に縁取られた目に、黒髪が軽くかかっている。
色白の肌は、酒のせいか少し上気していた。
形の良い赤い唇は、何かを言いたげに開いたが、すぐにつぐまれた。
女みてぇ＿＿
「＿＿やっぱりお前は綺麗だな...」
混濁していく意識の中で呟いた。
すると、ぱっと顔を朱に染める相川。
「なに、言ってるんですか...。僕は、男、ですよ...」
赤い唇が動いて、一つ一つ言葉を紡いでいく。
その表情は＿＿＿＿扇情的だった。
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作者名：涼 | 作成日時：2019年6月23日 23時
