出会いの瞬間 ページ4
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「「乾杯ー!!」」
明るい照明の下で男女数人がグラスを交わす。
大学からそれほど遠くない小洒落た居酒屋は、値段も手頃で酒もうまい。
気取りすぎた感じがせず、心地いい店内だった。
「じゃー早速自己紹介!俺は商学部1年の近藤悠太です。よろしく!」
仕切り役の悠太は、率先して流れを作っていた。人懐っこい柄だ。あいつを狙っている女子も多いだろう。拍手をしながらいぇーい!と場を盛り上げる声がする。
「で、俺の隣が...」
男から順々に自己紹介するようだ。
今日集まったのは男5人、女5人の合わせて10人。一つの長テーブルを囲み、手前が男、奥が女といった並びだ。
なるほど、確かに向こうはルックスがよく、全体的にレベルが高い。さすが悠太の人脈、というべきだろうか。
取り敢えず、自分の番が来る前に何か頼んでおこう、と適当にメニューを物色していた時だった。
「初めまして、相川瀬成(あいかわせな)です。えっと...こういう場はあんまり慣れてませんが、宜しくお願いします。」
耳あたりの良い落ち着いた声。ふっと横を見ると、整った横顔がそこにあった。
艶のある黒髪、透明感のある肌、すっと通った鼻筋に、長いまつげ。
一瞬女かと思った。だが声は紛れもなく男のそれだ。
中性的なその見た目に、俺は一瞬目を奪われていた。
「よろしく!」
「瀬成くんよろしくね!」
周りが簡単に拍手をする音で、我に返る。
純粋に、綺麗な顔だと思った。
格好いい、というより綺麗が似合う顔立ちだ。
ふと、相川瀬成が俺を見た。
俺からの視線を感じたのだろうか、否、俺が見すぎていたのか。
不自然にならないように、愛想笑いで話しかけた。
「どうも、初めまして。」
「どうも...。」
「瀬成くん、でいい?すごい綺麗な顔してるから、思わずじっと見ちゃったよ。」
半分冗談、半分本気といった声色で軽く笑いかける。
だが俺を見る相川瀬成の目は、怖いくらい澄んでいて、俺の心の底まで見透かされているように感じた。
気まずくなって、思わず目をそらす。
「おい!次お前の番だぞ!」
いいタイミングで奥から悠太の声がした。
なぜか少し慌てた心を落ち着かせ、軽く立ち上がる。
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作者名:涼 | 作成日時:2019年6月23日 23時