誘い ページ3
.
「よっ!一輝!って...新年度始まるっつーのに、まーだそんな落ち込んでんのかよ。」
「うるせーな...。」
「ショックなのは分かるけどよ、また新しい彼女作れよ。な?お前顔はいいんだし。」
騒々しく話かけてくるこの男__近藤悠太(こんどうゆうた)は今年大学に入ってから知り合った。
同じ1年の友達の中でもかなりフットワークが軽い。誰とでもすぐ仲良くなるタイプだ。
明るい性格で基本楽観的。だが、妙に素直なところもあり、憎めないのがやつだ。
「お!そうだ、今日の夜空いてる?」
「まあ...。」
「俺さ、新しい学部で知り合った女子たちと合コンやんだけど、どうよ?来ねぇ?」
「いや、俺はいいわ...。パスで。」
2週間前に彼女に振られ、そうそうに新しい彼女作りに励むのもどうかと思う。
それに何と言っても疲れた。悶々としたままの心で新しい出会いだとか、気が乗らない。
「なんだよ?お前が来れば顔面偏差値上がって、女子のテンションも上がるんだけどな?」
「うるせぇ。イケメンはお前一人で十分だろ。」
「おっ!言ってくれんじゃん。」
そう言ってニッと素直に、嬉しそうな顔をする。憎めないのはこういうところだ。
だが実際、傍から見ても悠太は整った顔をしている。
「でも一輝、お前ずっとそのままいじけてるつもりかよ。そんなんじゃ忘れたいことも忘れらんねぇぞ。」
少し真剣な声色で悠太が言った。
分かってる...そんなこと。振られたくらいで、いつまでもいじけている自分はダサい。でも、気が乗らないのも事実だった。
「気分転換って具合でもいいからさ、今夜は飲まね?一輝の心癒やす会も兼ねてやるよ。」
「合コンでそれはどうなんだよ...。」
おかしな提案に思わず笑った。
合コンは落ち込んでいる俺を見ての、悠太なりの気遣いなのかもしれない。だったらそれを無下に断るのも憚られる。
悠太の言う通り、気分転換がてらに今夜は行ってみるか。
「分かった。飲むよ。」
「よし!じゃあ7時に〇〇駅の居酒屋な。絶対来いよー!」
自分の学部の教室へ走りながら、手を振る悠太に苦笑した。
___この時俺があの合コンに行っていなかったら、何も始まらなかったのか。
34人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【BL】「し」かしながら、僕と契約したSランクの守護神が、性格がドSの疫病神だった...
【BL】完璧すぎる義弟と僕の距離が最近かなり近い件。【オリジナル】
もっと見る
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:涼 | 作成日時:2019年6月23日 23時