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「なぁ、そういやお前、最初の自己紹介のときに”こういう場は慣れてない”って言ってたけど、あんま飲み会とか行かねぇの?」


ふと、思い出したように彼が言った。意図してかわからないが、話題を変えてくれたことに感謝しつつ、火照る頬を冷ましできるだけ普通に返す。


「あぁ...うん、そんなに行かないかな。...合コンとか行っても意味ないし。」


男女で交際するきっかけを作る場は、自分にとって何の意味もない。誘われることは多かったが、基本全て断ってきた。


「いや、お前狙ってる女子多いと思うぞ。」


彼のその言葉に心苦しくなる。なんだか騙しているようで__

そうじゃないんだ、僕は.......言えるものなら言ってみたい。でも、今はまだ無理だ。




「僕は、あんまり...恋愛とか興味ないんだ。」


なんてことないように笑いながら言ったつもりだが、妙に頬が引きつる。上手く笑えているだろうか。




ふと思った、この言葉は嘘じゃない。恋愛らしい恋愛は、実際長らくしていなかった。


自分が普通じゃないと気づいたのが中学生だった為、その頃は持て余す欲のやり場に困ったのを覚えている。欲を吐き出す相手に飢えていたが、今は___





いや、僕は間違えた方向に進んでしまったのかもしれないな...



「あぁ...、なるほどな...。そういやさ、俺最近彼女に振られてて、今日この合コンに来たのはヤケクソみたいな部分もあんだよね...。」


少し寂しげな声色で彼が言った。


そういう理由か...、最初妙にテンションが低いと思ったのはそのせいだったからか。

_だが今、彼女がいない、ということに少し喜びを覚えてしまう自分がいた。

でもそれ以上に、ずっと心の中にあった鬱憤を彼が僕へ打ち明けてくれたように感じて、嬉しかった。



「俺も、もう恋愛はいいや...って思ってる...。」



言いながら、彼はよろっと傾いた。流石に酔いが回ってきたのだろうか、それとも酔のピークがいきなり来るタイプだったか...。

驚いて声をかける。


「一輝さん?ちょっと大丈夫ですか?」



「......酔ったわ...」



彼は小さくつぶやきながら、僕の方へ頭を預けた。


「...っ」



肩に心地よい重みがかかり、思わず力が入ってしまう。無意識、これは完全に酔ってる...。

でもすぐそこにある彼の顔を見ると、どうしても心が苦しい。



「ちょっ、一輝さんってば!」


「...動くなよ」




僕の肩へ、彼が頬を擦り当てた。



これは...かなりまずい__


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作者名: | 作成日時:2019年6月23日 23時

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