『魔力回路』side:勇者 ページ34
「...そうだな。少し、休め」
柔らかな月光が彼女の輪郭を仄かに照らす。
それはまるで、完成された一枚の絵画のようで──俺は暫く、彼女にみとれていた。
「お手本を魅せてやろう」
そう言うとあたかも当然の如く、魔力を巡らせ始める。
その精度は俺と比べることがおこがましいほどで、彼我の隔絶した実力の差を実感させられた。
「『
彼女の親指には、小さな火の玉が浮遊していた。
数センチ程度の物だが、そこからは確かな魔力が感じられる。
呼び方が『貴様』から『勇者』に変わったのは、きっと俺のことを一人の魔法使いとして認めてくれたからだろう。
ところで──、と、前々から気になっていたことを尋ねる。
「『魔力回路』ってなんですか?」
「......、そうか。話していなかったな。魔力回路とは──」
魔力回路とは、魔法を行使する際、魔力を通す管のことを指す。
即ち、魔力の通り道のことだ。
人間の器官の一つである血管と似たような働きをしており、『魔力を通すか否か』の違いしかない。
魔力回路の太さは人それぞれであり、太い者は貴族に多い。それは血縁に所以しているが故でもあり、『血液社会』と言われる原因のひとつでもある。
魔力回路の太い者は、魔法を行使する際有利となる。
一度に循環させる魔力量が多く、大技を使いやすい。
勿論、使うだけなら農民でも魔法は使える。
しかし、効率は圧倒的に貴族の方がいい。
殺伐とした世界だからこそ、戦力になりやすい彼らが優遇されるのも致し方なしである。
魔力回路が極端に太い場所は、行使の際皮膚に浮かび上がることもあるらしい。
だが、そこまでの者は中々おらず、半都市伝説化しているのが現状だ。
因みに、浮かび上がった紋章を『聖痕』といい、聖痕を所有するものは、神から多大なる加護を承った者...通称、『加護持ち』と言われる。
「──こんなところだ。何か、質問はあるか」
「その、『加護持ち』ってこの国にいるんですか?」
ふむ、と彼女は軽く頷くと、
「私の知る限り......一人は確実にいる」
自信たっぷりにそう言った。
「え、でも半都市伝説化しているくらいだから見つかってないんじゃ...」
「ああ、世間一般ではそうだろう。──だが、もし、それを隠している者がいたとすれば......?」
ああ、つまり、そういうことか。
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haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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