インチキ?それとも ページ18
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神威
少しだけ、寄り道しつつ、昨日ぶりの京の町を歩く。何をしていたって、何故だかAの事は頭から離れなかった。
「(このままじゃ、Aが浮かない顔したままじゃ、嫌だって言うのは分かるけど……さ、)」
どうすれば良いのかは分からない。
…そもそも、俺はAの、もっと内側を見てみたくて此処に来たはずなのに、この有様だ。つくづく、俺は人との関係作りが下手らしい。
「ちょいと、そこの若いもんや」
「…それ、もしかして俺のこと?」
急に少し離れたところから聞こえた声に、後ろを振り返ると、黒っぽい服に身を包み、机の上で腕を組んだおじいさんが此方を見上げていた。
多分、地球で流行ってるとかいう占いってヤツだ。
「お主を、占ってやろうか」
「結構だよ。そんなモノに頼る必要無いし」
「ならば今、お主が悩んでいる事を当ててやろうか?」
振り返ったことを少し後悔しつつ背を向けた俺に、声はさらに追いかけて来る。
しつこい、と思ったがその内容に反応せざるを得なかった。
「俺の悩みを当てる?やってみなよ。出来る筈無いよ、俺だって分からないんだから」
「……いや、かなりわかり易い悩みじゃが?」
自称占い師は水晶玉にちらりと目をやってあっさりと言ってのける。そして、
「ーーズバリ、色恋の悩みじゃな」
と続けた。
その言葉に、俺は眉を顰める。
「……とんだインチキ占いだね。色恋なんて、俺から最も無縁な悩みだよ」
「そう言うヤツほど気付けばのめり込んどるものじゃ。それに、無縁だと言うなら其の手に持っとる物は何じゃ?」
「……これ、は……」
占い師に指されて、俺は己の手の中に視線を落とす。今しがた、手に入れたばかりのそれは、手の中で朝日を受けて光り輝いている。
ーー色恋なんて、愛なんて、俺には関係無い。
ずっとそう思って生きてきた。戦いを、目の前の戦場だけを見据えていれば良いと。
…けれど、それだけを思えなくなって来たのは、何時からだろう。俺よりも弱い筈の、淘汰するべき存在に、感情を振り回されるようになったのは、何時からだろう。
「お主は恐れとるだけじゃよ。未知なる感情を知る事が、認める事が」
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時