ワスレナグサ ( ym × ar )

▽ 38 in ページ38

.




ひとしきり泣いた後、大ちゃんは静かに俺の腕の中で寝息を立て始めた 。

時々しゃくりあげる姿が可哀想で、山田だったら 大ちゃんが泣いた時どうやって慰めてあげていたんだろう？

姿も顔も性格も全く似ていない俺と山田。
大ちゃんが好きなのは山田で、だからこそ自分の中で山田に近い部分とか、山田以上の物を探してしまった 。





「 ... 大ちゃんね、山田にお菓子作ったんだよ 」



重い雰囲気に零された光の声は確かに震えていた 。
薮も高木も俺も、光の小さな声を聞き逃さないように真剣に耳を傾けたのに、光だって限界みたいだ


ぽつり、ぽつり、手の甲に落ちる涙の数は減ることは無くて 光の隣にいた薮が咄嗟に冷めたおしぼりで頬を撫でた 。





仲間の事を思って流す涙ってすげー綺麗なんだなって自分は他人事みたいに考えていたけど、そうしていないと俺だって泣きそうだった 。




「 バレンタイン終わったけど、作ってあげたいって

... 大ちゃん、必死で、
『ひか！教えてっ』 って普段料理の本なんて使わないくせに、いっぱい俺のとこ持って来て


卵割るのも、下手だし 調味料の順番も間違えちゃうし、

すげー時間かけて、頑張って作ってたのに、 」








「 大ちゃん、全部知ってたのかな .. ？ 」




そんな話、本当は聞きたくない 。
山田を今すぐここに呼んで最初から説明してもらいたい 。


そうしたら誤解かもしれないし、まだ真実って決まってるわけじゃないから


痛いくらいに聞かされた光の話に耳を塞ぎたい衝動に駆られたけど、


光の最後の言葉を聞いて、俺たち3人も泣いていたことに気がついた 。








.

▽ 39 ym→←▽ 37 in

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す