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この1年はとにかく変化が多かった。まずは何と言っても独身から既婚になった。坂元から福尾になれたのは大きい変化で、最近になってやっと福尾さんと呼ばれることに慣れてきた。
あとは……、亮がサラリーマンを辞めてYouTuberに専念し始めた。同棲を始めた。数時間前、5年ぶりにジャイアンツがリーグ優勝して大好きなキャプテンがやっと……、というのは少し違うか。でも1番は……
「……亮のおかげで殻を割る勇気が沸いたかな」
「A……」
亮の手が頬に触れる。私は彼の頭を覆うネメスを剥ぎ取る。ノーセットの髪の毛が風になびく。秋めいた涼しい風に引き寄せられるように唇が重なる。
新しい苗字に慣れたとしても、付き合いが長くなっても、甘く唇を啄むキスには今も慣れない。何度も角度を変え、味わうようなキスはこの上なく気持ちいい。
かっこよくて優しくて、ドSで人たらしな所もあるけれど、誰よりも私のことを愛してる、と言葉でも体でも伝えてくれる。その気持ちに答えたくて背中に腕を回す。亮の手は私の頭を支えつつも、離れないように添えられた。
「A……」
どれくらいキスを続けただろうか。顔が離れると、亮の熱い視線に囚われる。掠れた声から放たれた言葉は、心を掴んで離さない。
「誕生日、おめでとう」
再会してから5年、新しい歳は彼から始まる。
「ありがとう」
「琴葉さんもおめでとうだね」
「うん」
もしも彼女が生きていたら、一緒におめでとうを言いあえたはずだ。亮を放ったらかして2人で熱く語り合っただろう。
でも彼女が生きていたら、そもそも亮に出会えなかったかもしれない。亮だけじゃなくて、東海オンエアのメンバーにも出会えなかったはずだ。
「26歳はいよいよ結婚式だね」
「うん。3ヶ月後かあ……」
「その前には前撮りもあるね」
「着々と近づいてきてるって感じや」
「早くAのウェディングドレス姿が見たい」
「……私はタキシードも見たいけど、早く亮の私服が見たいな」
もう2ヶ月もまともに亮の私服を見れていない。いくら十字架とはいえ、Tシャツとデニムスキニーのシンプルコーデだけで映える彼を早くこの目に焼き付けたい。
「俺も早く私服を着たい」
「あと1ヶ月の我慢だね……」
「バカなげえ……」
亮はガクッとこうべを垂れた。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時