♯ ページ19
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何で? どうして?
後ろを振り返れば、顔を歪ませて私を見つめる亮がいる。
「琴葉さんのこと、理絵さんとお義父さんに聞いた」
切れ長の瞳から一筋の涙が溢れる。そのまま線香に火を付けて線香立てに立ててしばらく手を合わせると、いつものように私の腰を抱いた。
「はじめまして、Aの夫です。挨拶が遅れてごめんなさい」
「……っ!」
「僕はAのことを誰よりも近くで守りたいって真剣に思ってます。琴葉さんの目に今の僕がどう映っているのか分からんけど……」
琴葉さんに負けないくらい彼女を愛しています、と抱いた手が強くなった。
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Aがこの前以上に泣いている。今まで堪えてきた悲しみを流すように、沢山の涙を流している。小さく震える背中をただゆっくりと撫でた。
夏休みが始まる頃のAにはいつも元気がなかった。中学生の時はまだ心から笑えていなかったというのもあるけど、笑顔がいつも以上に引きつる。
少しでも雑に扱うと壊れてしまいそうなくらい、悲しそうに笑う。
『Aに何があったか、俺は分からん。でも苦しめるものを教えてくれたら、救えるかもしれんのに……』
中学だけじゃない。成人式で再会したあとも、必ず明るさが影を潜める。去年も一昨年も、その前の年もやっぱり気が置けないほど落ち込む。
中学では俊光と、東海オンエアができてからはメンバー全員と頭を悩ませた。
『大切な人の命日が近いのではないか』
双子だったことを除いて皆の予想は的中していた。
『家族の中で1番ショック受けたのはAやからなあ』
『Aはずっと琴葉と一緒やったし、双子で誰よりも特別やったと思う』
『でも私らが先に動揺してしもたから、泣きたくても泣けへんかったと思うねん』
申し訳ないことをした、とご両親は悲しそうに2人の写真を眺める。少し色あせた笑顔は見分けるのが難しいほどそっくりだった。
『亮くんにはAが思いっきり笑えて泣ける場所であってほしい』
『Aは琴葉が亡くなったのは自分のせいやって思ってる。……早く呪縛から解放してやりたいの』
俺もAが心を開ける場所でありたい。琴葉さんには程遠いかもしれないが、Aを1番に理解してあげられる存在になりたい。
……琴葉さんを思い、一緒に泣ける存在になりたいんだよ。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時