君は今この空を見ているか (ページ9)

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長い長い撮影とフライトを終え、日本へ帰ってきた。撮影クルーとは飛行機の中で一旦解散し、次は年明けに集まることになった。ここからはオフだから今日は自由に行動できる。

大きなキャリーバッグとお土産を引きずってロビーまで歩くと、誰よりも身長が高くて頭1つ分突き抜けている亮がキョロキョロと周りを見渡している。

ロング丈のダッフルコートがよくお似合いなことよ。探してる姿まで様になるってどういうこと？

こっちに気づいてなさそうだったから、できるだけ周囲に紛れ込んでバレないように背後からそーっと近づく。

「ただいまっ！」

肩を2回、トントンと叩く。
驚いて振り向いた亮は花が咲くようにパーッと笑顔になった。

「……おかえり！」

真っ白な歯がキラキラ輝く。1番会いたかった人に1番に会えた。

「フランス楽しかった？」

「うん！でも亮くんに会えんかったから寂しかった」

「俺も寂しかったよ。1週間も会えんのつらすぎ」

何だかんだで付き合い始めてからこんなに会えなかったのは初めてかも。

亮は仕事をしているし、私も時々大阪に帰省したり東京で泊まりがけの仕事があったりするから、いくら付き合っていても毎日会える訳じゃない。

ビデオ通話ができてどこにいても顔を合わせられる時代になろうと、やっぱりその温もりを感じるのには敵わない。繋いだ手から感じる高めの体温がそう語りかけた。

「よし、ホテル行こう」

「えっ」

帰ってきて初っ端がそこ？ご飯じゃなくて？時差ボケも酷いのに？
亮はキャリー持つよ、とスマートに青色のそれを奪い去る。

「……そういう事だから、明日は首周りが隠れる服を着といてね」

ああ、今から私は捕食されるのね……
いやらしさの1つもない妖艶な笑顔に胸がドクッと脈を打った。

多分ここまで来たら逃げられやしない。大人しく亮に連れられ、タクシーに乗って予約してあったであろうホテルに直行する。

車内は緊張なのか気持ちをそっちに向けているのか、驚くほどに静かだった。

チェックインして部屋に入るとシャワーを浴びる暇もなく押し倒される。

「待って、お風呂……」

「そんなの後でいいじゃん……」

身繕いが剥がれた私達は時間が経つのを忘れ、互いの温もりに酔い溺れる。体を貪る余裕のない亮を見るのは何年も一緒にいて初めてだった。