君は今この空を見ているか (ページ30)

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♯ ページ30

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『次はいつ会えるかな？』

『うーん、大人になってから、かな……』

最短でも大学生になってから。
気が遠くなりそうだった。まだ高校生にもなれていないのに、大学生になるのを待たなくちゃいけないなんて……。

『でも私、何や分からんけど、いつかまた福尾くんに会える気がすんねん』

Aちゃんの目から涙が止まる。ニヒッと笑って見上げる瞳はあまりにも純粋だった。

『何で？』

『何となく。理由はないけど、また会えると思うねん！』

『何それ……』

今思えばAは奇跡を信じていたんだと思う。1番信じるべき人間が、1番信じられていなかった。

『まあでもしばらく会えんのには変わりないから……』

Aちゃんはギューッと抱きつく。

『もうちょっと、こうさせて……？』

『……うん』

少しでいいから恋人でいよう。思い描いた両想いの夢を、短い時間でいいから叶えていたい。これから会えなくなる寂しさを埋めるように、俺らはずっと、ずっと抱きしめ合っていた。

『ねえ』

『ん？』

『……チュー、してもいい？』

『いいよ……』

その色っぽい唇に、何度も触れるだけのキスをする。彼女もまた、俺の行為を受け入れようとしてくれた。

大人になってみて思う。俺ら、バカみたいにませてたな、と。でも当時は少し大人になれた優越感と、好きな子に愛を注げた満足感でいっぱいだった。

……たった数時間が桃源郷だった。

「……そんなことがあったんだね。亮くんとAちゃん」

「羨ましい？」

思い出すと唇が熱を帯びていく。下半身にも血が通って、ムクリと元気を蓄える。

下世話だ、なんて人のことなんて言えやしない。自分が1番酷い。

でも心から好きになった女で欲っぽくなるのは、あの時以来のことだ。Aなき後の自分はきっと、女体にAを重ねて満足したふりをしてきたんだろう。

改めて今まで抱いてきた女達にその気はなく、その場しのぎの使い捨てだったのだ、と思い知る。

「羨ましいとかはないけど、いい恋してたんだなーって思ったよ」

亮ちん、としばゆーが神妙な面持ちでこちらへ体を向ける。

「俺は亮ちんの恋、応援してるよ」

童顔のくせにタバコをふかして大人ぶりやがって。

右手でグッドサインを出すしばゆーにありがとう、と言って俺はまたビールグラスに口をつけた。