君は今この空を見ているか (ページ29)

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ビールを飲みながら考える。

「亮ちん？そんなに飲むと明日大変だら……？」

柴田に止めときなよ、と心配される。でも今日は飲んでいないとやっていられなかった。

坂元A。高校時代を大阪で過ごした後、進学で愛知に戻ってきて、最近は俊光と一緒に徹也と柴田の動画撮影を手伝っていたらしい。

東海オンエアは7人。2人や他の4人から聞いていた。

美人で名大に通う頭のいい理系女子、大阪生まれ、高身長でモデルみたい。忙しいのもあるけど、亮のタイプに近い子だから、という理不尽で3ヶ月も会えなかった。

「俺さ、ずっと会いたかったんだ、Aちゃんに……」

「……うん」

皆が伏し目がちに相槌を打つ。

「お前らだから話せるけどさ……、俺とAちゃん、両想いだったんだよ……」

そして再び全員が目を丸くした。

「でも、結ばれんかった……」

ふと涙が溢れそうになった。……俺、すげえ酔っ払ってんな。

でもあの時も、胸が苦しくなるほど、泣きたくなるほど、好きだったんだよ……

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卒業式の後の最後のホームルーム。一瞬時が止まった。

『3月下旬に大阪に引っ越して……』

別れるのを望んでいたかのような、未来を見据えた凛々しい瞳。何で？どうして？ ……高校も一緒だって言ったじゃん。俊光も一緒に、3人一緒にいれるんじゃなかったの……？

Aちゃんの1番の理解者になれていると思っていたのに、何も知らなかった。寂しいよりも悔しかった。

両親も先生も、俊光も友達の優香ちゃんも、大阪行きを知っていたと後で聞いた。

Aちゃんが福尾くんには自分で言うから、と漏らさないでほしいと願ったことも。

放課後、また目の前が真っ暗になった。

『私も好きだよ……』

そう言って泣き始める彼女を抱きしめることにしかできない。

『本当はね、告白なんてしやんつもりやった。辛くなるから。でも福尾くんのせいで言わんといかんなったやん……』

『でも告白しんのは悲しかったかもよ？』

『それで良かったんよ。未練残るから……』

Aちゃんの寂しそうな笑顔と頬に流れる涙。

『ごめん……』

気持ちを汲み取らずに本能のままに動いた自分に最後にいい思い出ができたよ、と泣きながら笑ってフォローする。

『泣かんで……』

俺の、初めてにして最大の失恋だった。