君は今この空を見ているか (ページ28)

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Ⅰ.運命の始まりページ28

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信じていれば夢や目標、希望は叶う。嘘こけ。そんなの絵空事だろう。俺は信じない。

でも今日、真実だったのだと初めて知った。信じざるを得なかった。

「いやあ、初めて見たわ！亮が女にデレデレしとるとこ！」

「それな。亮くんってもっと淡白だったよな？」

増田と出っ歯がウイスキーを飲みながら未知の生物を見つけたかのような目線を送った。

同窓会が終わり、高校3年のクラスで仲良しだった奴らと集まって二時会が始まった。異性がいても自然と女の子やえろの話で盛り上がる。

「……俺だって可愛い子には弱いよ」

言わんとしていることは分かる。

高校時代も大学生の今も、それなりに彼女がおったし女に告られる。試しに付き合ってキスして体を重ねたこともある。でもその子に夢中になれずに短期間で終わり。数と経験だけが増えた。

結局は他の奴らの惚気話を聞く方が多かったし、楽しかった。

「確かにAちゃんは可愛かった」

「でもあれだ、あの子の横に立つのは俺らじゃ無理！」

「いや、増田はいけるやろ」

「無理無理！！美人すぎる！！」

ウザい。Aちゃんを、Aをそういう陳腐な話題の対象にするなよ。可愛いに決まってんだろ。

「……お前ら、そこら辺にしときん？」

静かに切り出したのは意外にも柴田だった。

「亮ちんが不機嫌だよ？」

「え、これがダメなん！？」

「……まあ」

そこにいた全員が目を丸くする。

「あの子のこと好きだからね」

ずっと考えていたけど、俺はAちゃんに恋をしている。

朗らかで明るい笑顔を見た瞬間に胸が温かくも苦しくなった。頭の中に焼き付いて離れない。可愛いのに美しく、大人っぽさが増した彼女に惚れ直した。

また今度ではなく、明日会いたい。

こんな気持ちになったのは中学以来だった。

これを『恋』と呼ばずになんと言うのだろう。

「はっきり言ったな……」

「亮ちん本気じゃん……」

Aといけるんじゃないか、と持て囃されていた増田、増田にAを勧めた出っ歯、俺の不機嫌にいち早く気づいたはずの柴田。

皆高校時代から知ってるけど、特定の誰かが好きだと自分から言えたのはこれが初めてだったはずだ。

「本気の本気？」

親友の女にそう聞かれて本気だ、と頷く。その場にいた全員が呆気に取られていた。