君は今この空を見ているか (ページ22)

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「りょうに直してほしい所は？」

としみつは賭けに出るような気持ちでファンデーションを塗り広げるAに聞いた。りょうはいい男だけど1人の人間だ。ポンコツな所もある。

この関係も長くなったし、不満の1つや2つくらい引き出せるのではないかと目論んでいた。

「そうねえ……、ぜんっぜん見つからんけど、イケメンすぎるのどうにかして欲しい。顔も性格もイケメンすぎるから、毎日ドキドキする」

「待って、それは言い過ぎ！弄らんでよ！」

「なんだよイケメン！いい加減イケメンを認めなさい！」

「そうだそうだ！」

「イケメンじゃないわ！いや、Aの前ではかっこ良くいたいけど！」

喧嘩するのかイチャつくのか、どっちかにしろよ。虫さんがAに加担し、てつやもウンウンと頷く。

「イケメンを認めない所が不満」

「一生認めない。イケメンじゃない。」

なんだこいつら。ウザ。言い合いすらもイチャつきに変わるやん。としみつは自分で話題を振っておきながら不機嫌になりそうだった。

でもりょうは完璧だ。高身長でイケメンで優しい。仕事を続けながら日曜日は東海オンエアの1人として動画を撮る。

その一方でAを一途に誠実に愛している。Aに幸せな生活をプレゼントするために頑張るんだ、とあの明るく優しい笑顔で語るくらいに愛している。

りょうの人生の中には今までも『これから』も、Aの存在がある。愛の強さや重さはファンに負けない。多分世界で1番のAファンだ。

同時に、自分の劣等感を際立たせて自信がなくなってしまう。……そりゃAが惚れた男だげえ、勝ち目なんてねえとは思っとったけど。いざ現実を突きつけられると胸が痛い。

「眉毛は私は自まゆげが濃い方だからパウダーアイブロウで薄い所を書き足して、眉マスカラで色を付けて垢抜けさせてます！」

……本当にいい女になった。昔はメガネかけて長かった髪を1つに束ね、校則のせいとはいえメイクもせずに眉もいじらんようにしとったから、可愛かったけどどことなく芋っぽさがあった。

それが今や……、コンタクトしてメイクして、最近切ったワンレンのショートボブをコテで巻いとる。
昔と同じなのは黒髪くらいだ。

20代半ばともなれば色気もそれなりに出る。白いうなじには消えかけの小さなあざ……、愛し合った跡が残っていた。