君は今この空を見ているか (ページ16)

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てつやに促されて虫さんが前髪を両手でかき上げると、黒髪に適度な長さに切り取られたガムテープが貼られる。

「わあ……」

「心の声だだ漏れ」

りょうが小声で横腹をつつく。

「そらそうなるって。りょうもジャン負けしたら、あんなんなるかもしれんかったんだよ？」

「ゾッとするね」

「ね」

自分達だったら嫌だ。そんな会話をしていたら、てつやの手が止まって私をジーッと見ている。まるで悩める子羊のように。

「どうしたん？」

「……こっからどうしたらいい？」

無計画かよ！
私ならスキンケアしたり化粧下地塗ったりするけど、買ってきた物の中にそれらしき物は見当たらない。

「とりあえずファンデーションしたら？」

コスメ選びも4人の男達に任せているから、とりあえずある物で済ませればいい。短絡的な考えの元で提案すると、

「えー、まずは、ファンデーションですね」

ピントを合わせるために手のひらを背景にして、てつやはファンデーションを紹介した。

「ふふっ」

「おい、そ、そんな紹介の仕方があるか！」

間違っちゃいないけど！大雑把すぎてわろける。このためにメイク動画見たんちゃうんかい。

「ブランド名と商品名な？」

「ああ、そういうこと！えーっと、レブロンのカラーステイUV 01とか10とかです。これをね、この……」

「ハンペンで」

「ハンペンで塗っていきます」

「ハンペン！？」

「これをね、3プッシュします」

てつやはハンペンに3回ほどパウダーを叩き込み、虫さんの顔の右半分に塗ったくっていく。元々の粉色が白いからか、リアルに半顔メイクみたいになっている。

「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」

粉を吸い込んだ虫さんがむせる。

「えー、これは、ブルゾン咳ってやつです」

「ふはっ！」

一同は笑いに包まれる。

「百日咳みたいな言い方するなよ！！」

何でもブルゾン付ければいいってもんやないやろ！めっちゃおもろかったけどさ！

「これこんなに塗るのかなあ……？ Aどう？」

「塗らないねえ」

「やっぱり！僕も彼女がメイクするとこ見てるけと、こんなに塗らんもん！」

「ちなみにこれ、男が本気でやってこうなってるんですよ！？」

弁解のてつやと裏腹に、りょうが身を乗り出し虫さんをまじまじと見つめてニヤリと笑みを浮かべた。