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私は翌日の茨木の式典に出席した。
岡崎では顔出し程度の挨拶回りをしようと思っててスーツで行くつもりやったんやけど、母親に『せっかく買ったんやしお母さん着付けと髪の毛したるから、振袖で行きや』と諭されて晴れ着姿を見せた。
深緑の布地には大きな牡丹が沢山あしらわれている。
式典を終わらせた新成人たちが会場から出てくる中、私はとしみつに指定された場所まで慣れない足取りで向かった。
待ち合わせ場所には退屈そうにスマホをいじる高身長イケメンがいる。
どうしよ、知らん人おるやん……。
心の中でテンパっていると、彼は驚いたように2度見して話しかけた。ナンパかと思って怖くなったけど違う。
目の前の彼は私の初恋の人。中学生の時とは比べ物にならないほどかっこよくなっていた。
『もしかしてとしみつ待ち?』
『うん! あとてつやって人と柴田くんって人を待ってる』
『あれ、Aちゃんあいつらと知り合いなの?』
『そうやけど、福尾くんも知り合いなん?』
『しばゆーは高校の同級生で、てつやは高校で同じ部活だった』
『そうなん!?』
話していくうちに色んなことが分かった。福尾くんは愛知で大学生をしている。
大学やバイトの合間を縫って、てつやとしばゆーのYouTube撮影を手伝っている。動画に関わる他のメンバーとは面識済み。私の存在はてつや達から何も聞かされておらず、今直接聞いて初めて知ったと。
『教えてくれたらよかったのにね?』
『ねっ』
それはそうと、福尾くんがかっこよすぎてドキドキする。身長が高くて足が長いからスーツがよく似合う。危ないから、とサッとそばに引き寄せてくれる。
『振袖似合ってるね、綺麗になったよ』
『……っ』
そのスマートさ、笑顔の爽やかさにまたドキッとした。
『そんなに照れる?』
福尾くんは初心だなあ、と茶化した。
『てかさ、LINE交換せん?』
『う、うん!』
振袖用の小さなバッグからスマホを取り出し、ふるふるでLINEの連絡先を送る。新しい友達として福尾くんのアカウントが加わった。恥ずかしくて嬉しくて、ぎゅっとスマホを握りしめた。
『そうだ、これを機にりょうって呼んでよ』
『りょう?』
『うん。苗字より呼び捨てかりょうくんの方がいいな』
福尾くんはお願い、と手を合わせた。
『俺もAって呼ぶから!』
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みぃみぃ(プロフ) - 主人公と、てつとしの絡みがもっと見たいです! (2019年7月18日 15時) (レス) id: 4c3df14bca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2018年9月5日 23時