愛はかたまり。 (ページ4)

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「あかんっ、無理！！！」

浴槽の中で暴れ、りょうの手を引っぺがそうと試みる。

これ以上甘くなってもらったら心臓が持たない。

ジャバジャバと波を立てるお湯。

でも抱きしめる腕の力が強くなってきて、

女では太刀打ちできない強さになっていく。

「何で？そんなに俺と風呂入るの嫌？」

裏腹にりょうの顔は怒られた子犬のように落ち込んでいる。

「あんまりカップルっぽい事できんからさ……、

久々にAと2人でいれてばか嬉しかったんだけど、俺だけやった？」

「いや、そういう訳じゃなくてね……？」

りょうの言う通り、

私達は普通のカップルではないから恋人らしい時間はなかなか作れないし、

仮にそばに彼がいても、構ってあげられない。

単純に他の男達の世話に忙しいという理由が含まれているけど。

「あんまり慣れてへんから恥ずかしくて……」

そのために私のりょうへの耐性もできていない。

付き合って2年も経てば関係は安定するのだろうと思っていたけど、

現状は今でも緊張がほとばしる。

裸を見るなんて事があれば、

顔から火が出そうになるほど紅潮していると思う。

でも好きじゃなかったらお泊まりせんし、

そもそも付き合いもしていないと思う。

「本当に？無理してない？」

「してへんよ。ほんまに恥ずかしいだけ」

今日のりょうくんは少し弱気だ。守ってあげたくなる、

母性本能をくすぐられるようなか弱さ。

普段のドSな彼からは想像もつかない。

弱気な姿を見ていたら、

羞恥でどうにかなりそうだった心臓はいつの間にか落ち着きを取り戻した。

「今日の撮影終わったら2人でご飯行こう？誰に何言われても2人で」

「やったー！！」

りょうは嬉しそうに、再び腕の力を強めた。

やっぱりりょうには無邪気な笑顔がよく似合う。

動画では余裕のあるモデル体型の長身イケメンとして人気だけど、

カメラが消えれば彼だって普通の20代半ばの男だ。

甘やかす時間を少しでも増やさなきゃね。

「じゃあ朝ご飯作ってくるから離して？」

日に焼けた腕を少し叩く。

「うん。すぐ上がる」

「もっと長く入っとってええよ」

そんな逃げていく訳じゃないし。

近くにあった白いタオルで体を隠して、私は浴室から出た。

……次からは不測の事態に備えて、予備タオルも持ち込もう。