【熾烈】第1回紅一点王 ページ29
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結局どうして泣いていたのか教えてもらえないまま、Aは虫さんの隣に座った。感極まったのか、それとも生理現象で流れたのか。これはあとで問い詰めないといけないな。
「じゃあ始めますか!」
「始めよー!」
てつやとAの声に合わせて虫さんがカメラの録画ボタンを押す。今からは東海オンエアのりょうになる。
「やあどうも東海オンエアのてつやと、」
「りょうと!」
「としみつとっ」
「画面外の虫眼鏡と!」
「Aだっ」
いつもの挨拶。Aはゆっくり立ち上がり、カメラのレンズに向かってピースをする。
「あ、第1回、A王〜!!」
てつやが叫ぶと皆、というかA以外のメンバーが大きな拍手を送る。
「いやー、やってきましたよ、本命が」
「今までの俺らのは前菜ってか!」
てつやととしみつが言う通り、この企画が決まってから皆A王に参加したいと並々ならぬ熱意を虫さんに伝えていた。
「今回はAを愛してやまないと噂の3人に答えてもらいます。またの名をA親衛隊」
「そんな言い方したら、しばゆーとゆめまるがAのこと嫌いみたいやん」
もちろんこの場にいないしばゆーとゆめまるも絶対に参加するんだと意気込んでいた。でも、残念ながら2人とも多忙で叶わなかった。
回答者はてつや、としみつ、俺。他の6人の時に比べて俄然やる気がある。
「てか何? その昭和のアイドルファンみたいな古臭いネーミングセンス」
Aが馬鹿にしたような笑いで呼びかけると、
「……誰がおじさんだ!!!」
と、虫さんが唇を尖らせて拗ねる。
「いや、虫さんに言うてへんよ!?」
「言ってるようなもんだよ!!!」
ごめんごめん、と宥めるAはまるで母親のような温かい眼差しを向けた。
でもさ、虫さんをいじけさせたのはAやん。
「……てかさ、このくだり、長くない?」
「長いね」
そろそろオープニング撮影も長くなってきて、としみつが飽きてきたらしい。般若のようにカメラを鋭く睨む。
気を取り直して、俺達は虫さんとAの方を向く。
「A王を獲得した方には、今回は!」
「おっ」
「特別に!!」
「おおっ!?」
「ハグ、そして1日Aと過ごせる権利を与えます!!!」
……こんなの勝つしかないじゃん。てつやととしみつに負けるもんか。
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みぃみぃ(プロフ) - 主人公と、てつとしの絡みがもっと見たいです! (2019年7月18日 15時) (レス) id: 4c3df14bca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2018年9月5日 23時