真剣に ページ23
.
同棲が決まったから、次は家を決めなくては。間取りはどうしよう。
Aは今の家で個人チャンネルの撮影をしてるから、できれば部屋は多い方がいいし防音設備もあった方がいい。
俺も服を収納するスペースが欲しいし、セキュリティ面も考慮すれば普通のカップルの同棲部屋よりも家賃は高くなるかも。
そうだ、生活費をどうするのかも考えなくちゃ……。
「なーに難しい顔してるん?」
エレベーターの中でAが弾んだ声で俺の頬をつつく。
「ん? 同棲の色々を考えてた」
「早いなあ」
「こう見えて真剣に考えてるんだよ?」
「それは分かる」
でも話し合って決めればいいか。まだ決まったばっかりだし、まずは余韻に浸ればいい。俺だけの問題じゃないし。1人で突っ走ってAを置いてけぼりにしたら、同棲の意味がなくなる。
エレベーターを降り、オンエアハウスへ戻る歩みは驚く程に軽かった。
「ただいまー」
「おかえり……、おいっ、Aっ、何でうどん買っとるんだ!! それは誰の金で買ったんだ!!」
玄関を開けるなりてつやが叫ぶ。
「てつやのだよ。さっき俺の目の前でAに色目使った罰」
「いいやん! わしもAとイチャラブしたい!!」
「それがダメだって言ってんの。Aは彼氏持ちなんだからね?」
「子供の喧嘩かよ」
どうでもええわ、とAは苦笑いしながら奥へと進む。どうでも良くない。子供の喧嘩でもない。Aをかけた、男と男の真剣な喧嘩だよ。当の本人は興味なさげで、俺らを置いていったけれど。
そういう所、猫みたいにマイペースだよね。風船みたいに軽くて、離すとどこに飛んでいくか分からないから追いかけたくなる。
「りょうくんとAちゃんおかえり。てつやのお金でAちゃんのうどん買ったんだ?」
リビングに戻ってくると、虫さんが編集をしながら話しかける。
「うん。食べたい食べたいって聞かないから」
「なるほどね」
冷静沈着。才色兼備。清廉潔白。そんな四字熟語が似合うA。普段は誰よりも大人っぽく、頭も良くて遠くから見守っていることが多いAだけど、時々すごく子供っぽくなる時がある。
うどん1つに躍起になって、やっぱり掴みどころがない。Aは天然で翻弄する。
今までにない恋愛をしているな、と今日もまた実感する。
577人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぃみぃ(プロフ) - 主人公と、てつとしの絡みがもっと見たいです! (2019年7月18日 15時) (レス) id: 4c3df14bca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あおやなぎ | 作成日時:2018年9月5日 23時