愛はかたまり。 (ページ12)

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虫眼鏡さんページ12

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「おはよう。虫眼鏡さん早いねー」

「Aちゃんとりょうくんも早いよ？」

リビングまで進むと既に虫さんが来ていて、パソコンを開いて編集作業を進めていた。

「今日も泊まったの？」

「俺がね」

「相変わらず仲いいなあ」

「ざわくんとこも仲良しやん」

ざわくんは満更でもなさそうにまあね、と頭をかいた。

「うざいなあ」

りょうは話を聞きながらソファを陣取り、スマホをいじり始める。

そんな彼を他所に、私は虫さんの隣に座ってローズゴールドのパソコンを起動させた。

東海オンエアの編集メンバーは皆、リンゴマークのパソコンを持っている。たまたまだけどこのメーカーのが1番使いやすいから、というのが私達の共通認識だ。

「Aちゃん、今日は投稿できそう？」

「うん。メインは終わらせてるし余裕でできる」

「はやっ。いつ終わらせたの？」

「一昨日の夜やで。今からやるのは個人チャンネルの編集」

「てつやに見習ってほしい」

虫さんは苦笑いしながら編集の手を進めた。

「それ、なんの動画？」

「弾いてみた動画」

「ああ、あれか」

白のエレキベースを構えた女性が画面に映し出される。前髪は無造作に束ねられ、メイクにもやる気のない全身黒のスウェットのズボラ女は紛れもない自分だ。

てつや、としみつ、虫眼鏡、ゆめまると同じく、私は個人チャンネルを開設している。

実は私は大学を卒業する同時に個人チャンネルを始めていて、今では登録者数は100万人を超えた。

「あれ好評なんでしょ？」

「うん。参考になるのと可愛いからって。どう見てもズボラやのに」

「女子力のへったくれもないよね」

「少しでいいからお世辞を言いなさい」

虫さんはあはは、と高い声を上げて笑った。

「メイク動画撮らないの？」

「撮らん。そんな教えるような技術ないしすっぴんブスやし」

ただ楽器を弾きながら歌ったり、ダンスを踊ったりするだけ。メイク動画なし、コラボも一切なしの趣味動画ばかりを投稿するチャンネルを100万人以上が見てくれるのだから、YouTuberは夢があるよなあとつくづく思う。

「ブスじゃないでしょ、真逆だよ真逆。Aちゃんもっと自信持ちなよ」

イケメンりょうくんみたいにね、と虫さんが茶化すと、いじめないで、と低い声が焦ったようにツッコミを入れた。