タイムリミット ページ11
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「時間なくなるから離れまーす」
なかなか離れてくれなくて痺れを切らして背中を軽く叩く。
「離しませーん」
でも亮はそう言いながら、ギュッと腕の力を強めた。
なんなん、これは。まだ仕返しは終わってないぞ、と言わんばかりに甘えてくるやん……。
また緊張しちゃうんだけど。
この時点で彼のギャップのつぼにハマってしまっているのだろう。
一瞬でも可愛いと思い、母性本能をくすぐられた自分がいたから。
「今日このまま休みたいなあ」
「あほ。今日は絶対5人で撮影って言われたやん」
「でもこんなくっついたら離したくなくなっちゃう」
「じゃあせーので離して」
私、お母さんかよ。自分で自分をつっこんでいると、
「……そんなに離れてほしいなら離れる」
と、再び拗ねて大きな体を縮ませてソファへ戻って行った。
「今日ご飯行くんやろ、そんな落ち込まんの!」
「……うん!」
困った人だ。
急に男らしくなったと思ったら怒られた子犬みたいに落ち込んで、根っこの部分はほとんど中学時代と変わらない気がする。
でもそんな亮が憎めなくて大好き。……本当は私もこの時間が過ぎてほしくないって思ってるのは絶対に秘密だ。
後片付けを終わらせたらお互い身支度をして、私は軽くメイクをして準備は終わる。
9時10分。これならオンエアハウスに全然間に合う。
「行こっか」
「うん」
手を繋いで家を出るのは暗黙の了解。
合鍵を使ってロックをかけてくれる姿を見ると、幸せすぎて泣いちゃいそうになる。一緒に暮らしている訳じゃないけれど、同じ空間で過ごしていた事実を私に強く知らせてくれている気がした。
「今日は私運転しよっか?」
「大丈夫。俺が運転する」
「ほんま亮は私に運転させたがらないよね」
「男はそんなもんだよ」
「初めて聞いた」
「Aが知らないだけだよ」
亮はそう言って笑った。真偽は別として、大人しく頼らせてもらおう。
私の家からオンエアハウス……てつやの家までは車で40分ほどかかる。帰るまでが遠足、ではないけれど、そこに着くまでがお互い素でいれるタイムリミットだ。
横顔、真剣な眼差しを独り占めできるなんてなんて幸せな朝なのだろう。
約40分後……、
「おはよう!」
「おはよー」
集合時間よりも随分早く、扉を開けた。
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みぃみぃ(プロフ) - 主人公と、てつとしの絡みがもっと見たいです! (2019年7月18日 15時) (レス) id: 4c3df14bca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2018年9月5日 23時