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「暗くなってきたね。」



「外出るか。」



大きな窓を開けてベランダに出る。
お世辞にも広いとは言えないけれど、花火を見るには絶好の場所。



「ふふ、楽しみだねぇ。」



目を輝かせてまだ暗いだけの空を見つめる山田。



「お前、彼女と行かねーの?」



ふと、そう尋ねてみた。


昔から、山田はモテるのだ。
告白された回数は数知れず。
もちろん彼女がいたこともあるけれど、毎年欠かさず、花火大会は俺の家のベランダだ。



「行かないよ。」



山田は俺を見ないままそう答えた。
なんだかそれ以上聞きづらくて、



「…そ。」



とだけ返事をする。



「わ、始まった!」



山田のその言葉で、夜空を見上げると、そこには大きな光の花が咲いていた。



「綺麗だね。」



嬉しそうに頬を緩めて、優しい表情で次々に打ち上がる花火を見る山田の横顔を、そっと盗み見る。
昔とは違うけれど、昔と同じ綺麗な顔。


両手に握られたりんご飴に花火の光が映って、
ぴかぴかと輝いている。



「ねぇ、ひか?」



花火を見つめたままの山田が口を開く。



「どうした?」



「俺、これからもずっと、ひかと一緒に花火を見たいな。」



花火が打ち上がる音は絶え間なく響いているのに、山田の声ははっきりと俺の耳に届く。



「俺ね、1年でいちばん、この日が好きなんだ。」



今度はちゃんとこっちを向いた山田は、幼い頃のように無邪気な、それでいてどこか大人びたような、そんな笑顔を俺にくれた。



「…当たり前だろ。

来年も、その先もずっと、この場所は俺と山田だけのものだよ。」



ありがとう、と言ってまた笑った山田がとても綺麗で、思わず目を細めた。

愛すこと、愛されること。-ytym-→←君と花火とりんご飴。-hkym-



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りょんな - なななさん» ありがとうございます!できるだけ更新していくつもりですので、また読みにいらしてください! (2018年7月21日 22時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
ななな - おかえりなさい!作品毎日欠かさず見てます!更新がんばってください(*´Д`*) (2018年7月21日 17時) (レス) id: 9722a33cb3 (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - いのあやりんさん» ありがとうございます!1年も経っているのに覚えていてくださる方がいらっしゃってほんとに幸せ者です…。更新頑張ります!また見にいらしてくださいね♪ (2018年7月20日 23時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
いのあやりん(プロフ) - おかえりなさい!りょんなさんの作品大好きで、また読めるんだと思ったら嬉しくてついコメントしてしまいました(笑)更新頑張ってくださいヾ(≧▽≦)ノ (2018年7月20日 16時) (レス) id: 927e799c3e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りょんな | 作成日時:2018年7月19日 21時

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