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じっと見つめていると、察しがよく振り向いてくれた。
「なに？」
ここに入ってきたときと同じように無視されるものだと思っていたから、少し驚いた。はて、どう切り出したものか。
「……きみもハンター試験を受けに来たんだよね？」
「いや同じ船に乗ってただろ」
ふ、船……！？確か船では人目につかないところにずっといたし(なぜならいじめられるから)、わたしが乗船したときにはまだこの少年は乗っていなかったはずだった。
「あれ？隠れんのうまかったからてっきりこっちにも気づいてると思ったのに」
「……隠れるの上手だね、きみも」
「まぁ、仕事だったから」
「え？」
「んでなんだよ！オレになんか頼みたそうな顔してただろ？」
あ、そんな顔してたんだわたし。少年の視線にじれったさから来るいらだちが混じってさらに言いにくくなってしまった。
「……その」
「なに」
「……文字読むの得意じゃなくて」
しん、と少年の纏う空気の時間が止まって静寂が降りる。たっぷり間をとると、大きな目を瞬かせて小首をかしげた。
「オレも読書するの好きじゃないけど」
「いやそうじゃなくて……発育環境が良くなかったんだ。読めるには読めるんだけど、スラスラっとはいかないし、……実は鉛筆の持ち方もよく分かってない」
まだはっきりと子供だと言える少年に対して同情を乞うみたいで、いたたまれなさが徐々に顔を俯かせる。少年が小さくため息をついた。
「それ、オレに探してほしいってことか」
「わ、わたしもできることはするよ！貸しにしたっていいから……お願いします」
立ち上がって自分の不甲斐なさを謝るようにして頭を下げた。少年は、今度は一際大きなため息をついた。そっと頭をあげると、ポケットから小さく折りたたんだ紙を取り出す。
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作者名：緑那 | 作成日時：2019年10月23日 19時
