【H×H】たまゆらの温もり (ページ6)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:771 hit

6 ページ6

ポケットに両手を突っ込んで、わたしの身長に合わせるように少しだけ背を丸めて言った。

「で？2人は何しに来たの」

「ここら辺の地形図を見に。彼はわたしをここまで案内してくれたの」

「それだけ？」

それだけって、そんな理由で十分だと思うけど。浅く頷けば、少年は興味がなさそうに軽くふぅんと零した。

「んじゃ、見つけたらやるよ。オレはいらないから」

そう言って返事も待たずに小走りで去っていく。このマイペースさ、やわらかそうな銀髪、目元。猫を思わせる要素が多い人だ。

______あれ？ちょっと待て。少年の言葉に、行動に、聞き逃してはならないものがあった。少年の背中をやはり穏やかな笑みで見送る老人を仰ぎみる。

「もしかして、どこになんの本があるかわからないの……？」

「ぁあそうだよ。すまないねぇ……地形図かぁ、あったとは思うけど場所までは思い出せないなぁ。悪いけど、自分で探しておくれ」

ほらね。これから費やす労力を換算してげんなりした気持ちと予想が当たったことに対する自棄に近い満足感が混ざって、老人になんとも形容しがたい顔を向けてしまった。

・

案内の役目を終えたトンパさんと別れて塔の方からくまなく捜索しはじめたばかりだというのに、両目と頭に蓄積する疲労が既にピークに至ろうとしていた。予想していた原因が予想以上の疲れを生み出している。目頭をつまんで天井を仰ぐと例の少年が本を小脇に抱えたまま塔の真ん中から飛び降りていて、照明が絶妙な具合で逆光になって映画のワンカットのように見えた。わたしから大股で3歩程の距離にほとんど音もなく着地する。もしわたしが彼に気づかないままで突然たったこれだけの距離に着地されたらびっくりするんじゃないかと思ったけど、ほんとうに静かだったから気づくことさえなかったかもしれない。