恋色ストロベリー【妖怪ウォッチ】 (ページ10)

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こんなに全力で走ったのは、いつぶりだろうか。

風も何も吹いていないはずなのに、炎は燃え盛る。暑い。

いつ時空神が追ってくるのかを考えると、恐怖が増す。

『どこかに隠れるべきかな…』

走りながら、独り言をつぶやいた。

走っても、追いつかれたらそこでおしまい。

ならば、隠れれば良いのではないか。私はそう考えた。

でも、ここら辺は地獄の一角。隠れられる場所なんてあるんだろうか。

『なんとかここから抜け出せれば…』

そこまで走れる自信はなかった。

走り続けて、景色はがらりと変わった。

周りの水に、灯篭(とうろう)が浮いている。これは、灯籠流し…？

灯篭のぼんやりした光が私を応援しているような気がする。

ここは、地獄とは違って、細い道以外、かなり広い。

その分、隠れやすいが、周りには誰もいない。時空神が全て、消してしまったのだろう。

そのため、見つかる可能性が高い。危険なエリアだ。それは、この宮殿内全ての部屋だが。

『はあ……はあ……』

走り続けて疲れた私は、大きな四角形の場所にいた。

内側の、机の下に身を潜める。

息が落ち着かない。心臓が、跳ね上がっている。

もちろん、喜びで跳ね上がっているわけじゃない。今の私は、時空神と、そして、恐怖から逃げている。

息を吸おうとしたその時___。

「なあ、いるんだろ？」

『！？』

どこか遠くで時空神の声がした。

まずい…このエリアは広いから走ったらすぐに見つかる…。それに、音を立てたらなおさら見つかる。

ゆっくり行ってみるのはどうなんだろう…。

「なあ、いるんだろ？」

こういう言葉を言って、出てくるわけがない。

あの地獄の場所にも、遺跡にもいなかったから、ここにいるとしか考えられない。

出てこないのなら。

オレは地面を軽く蹴って、上空に浮かぶ。

そして、すぐに見つけた。

内側の方に身を寄せて隠れる、Aの姿を。

「フフフ、見ーつけた…」

『え！？』

上から声がして、見上げる。

なんと。時空神が上から私を見ていた。

最悪だ…。まさか上空から探していたなんて。

これなら隠れても意味がない。

逃げようと思った…のに。

体が動かない。

『うっ……なに…これっ……』

動かしても、動かせない。私の周りにはなにもない……のに。