世界で一番甘い夏 〜回想 2 ページ4
「！」
起き上がったユノは胡坐をかき、髪をクシャクシャっとすると息を吐いて下を向いた。
「Aちゃん・・」
その背中が怒っているように見え、不安になるA。
「・・はい」
Aはシーツで胸を隠しながら起き上がり、ユノの背中をみつめた。
「ごめん・・・」
「え？」
急に謝られ不安が増す。
キュッと胸元のシーツを握り締めた。
「強引だったかもしれない」
「・・・」
真面目な顔をしたユノが振り返る。
「確かに、普通の生活をしているAちゃんに、僕に合わせて貰うのはキツイかもしれない」
ユノの両手がAの肩を掴んだ。
「こんなだから、いつも別れる事になって・・・」
「！」
「だけど、僕はこの仕事が好きだし、僕が選んだ道だから」
真っ直ぐな黒い瞳。
「少しだけ、僕に合わせてくれないかな？」
「・・・」
「僕はAちゃんを離したくない。だから、たくさん努力する。
だけど、どうにも出来ない事もある。時間とか、距離とか・・・。
我慢もさせちゃうけど、そんな中でも出来る限りの事はしたい。
会えるチャンスがあるなら少し無理してでも会える様にしたい。
出来る限りでいいから、僕に、合わせて貰えないかな？」
Aは瞳を潤ませて聞いていた。
「Aちゃんが大好きだから・・・」
「！」
溢れだした涙。
「っ・・・」
何度もうなずくAの頬に伝う涙を、ユノの長い指がそっと拭う。
「どうして泣くの？」
「怒ったのかと思って・・」
「どうして僕が怒るの？」
ユノは優しくAを抱き寄せた。
「呆れたかと思って・・」
「ん？」
「やっぱり・・私じゃ、釣り合わないって・・・終わりって、言われるのかって」
「！」
Aを抱きしめた腕にユノがギュッと力をこめる。
「ごめん・・、そうじゃないんだ。ちょっと、自分に腹が立って・・・
不安にさせてごめん」
腕の中のAは頭を横に振った。
「私こそごめんなさい。ユノさんの気持ちも知らずに・・」
手で涙を拭い笑顔を作って見せたAの背中をポンポンと軽く叩くユノ。
「それに・・、こんな事して終わりにしたら、僕、悪い男になっちゃうじゃない？」
「？」
ユノの指がAの顎を捉え、自分の方へと向けさせた。
「////」
柔らかい口びるが触れ啄み、Aは胸元を押さえたまま受け止めた。
ゆっくりと離れた口びる。
「・・ユノさん」
「ん？」
『ペゴパ』
「ふふっ」
クシャっとユノは笑った。
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作者名：カホル | 作成日時：2021年6月3日 16時
