３日目 2 ページ29
「はい！ わかりました」
元アイドルが健気に応えると、チャン ミンはスッと背を向け歩いて行った。
残されたAと元アイドル。
なんとなく微妙な空気が流れ、Aは自動販売機に向いてお金を入れた。
ゴトンと音がして取り出し口に落ちたペットボトルを取り出す。
「・・ねえ」
「？」
元アイドルが口を開いた。
「あなた、この前もいたわよね」
自分にかけられた言葉だと気づいたAが振り向いた。
「・・私ですか？」
「あなた、チャン ミンのなんなの？」
「え？？」
元アイドルの視線はアイドルらしからぬものだった。
「・・どうかしましたか？」
後ろから聞こえた声に振り返ると東方 神起のマネージャーが立っていた。
途端に口を閉じた元アイドルが歩き出す。
「お疲れ様で〜す」
今度はアイドルらしい声でマネージャーへと声をかけると、
すれ違いざまに肩をAにをぶつけていった。
「私を誰だと思って・・」
弾みで少し体制が崩れ、Aは手にしたペットボトルを足に落としてしまった。
「何かありましたか？」
何事もなかった様にペットボトルを拾い上げるA。
「いえ、大した事では・・」
「彼女に何か言われましたか？」
元アイドルが消えた方を見つめながらマネージャーが聞いた。
━(私を誰だと思って・・)
低い声でそう聞こえた。
「あの・・、この間もいたでしょ？とか」
「ああ・・」
「何と答えてもいけない気がして何も言えなかったんですが」
「はい」
「チャン ミンの何？だとかも・・」
「はは、そう来ましたか」
「はい・・。ちょっとチャン ミンさんとは話してただけなんですけど、
何をそう思ったのかわからないんですけど・・」
元アイドルの一言に、Aは少し当惑していた。
(まさかチャン ミンさんと疑われるなんて・・)
「一緒に楽屋、行きますか？」
何かを考える様な顔をしていたAにマネージャーが言った。
「僕のそばにいれば大丈夫ですから、彼女シフトで」
「・・・そうしていいですか？」
「はい、仲良く行きましょう(笑) それに彼女にはもう会わないと思うので安心してください」
「はい」
少し眉をひそめていたAを気遣って言ったマネージャーの言葉に
Aも微笑むと、並んで歩き始めた。
「足、大丈夫ですか？」
「え？」
「落としたでしょ？ ペットボトル」
「あー、大丈夫です」
バレバレだったことにAは苦笑した。
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作者名：カホル | 作成日時：2021年6月3日 16時
