二択 ページ8
顔を上げたAが懇願する様な目で啓太をみつめた。
ため息をつく啓太。
「どうしてそんなに、イル君に知られるのが嫌なの？」
「心配、かけるから・・」
「でも何も無かった事には出来ないし、後で知ったらその方がイル君、辛いと思うけど」
「・・・」
「薬箱持って来るから、その間に考えて」
そう言うと啓太は店の奥へと入って行った。
両手を握り締めているAを見て、ユノが動く。
「まずは拭こう。風邪ひいちゃうから」
うつむくAの髪を、ユノがバスタオルで拭いて行く。
「ごめん、顔見せて。泥がついちゃってる」
髪をどかすと、少し顔を上げたAと目が合う。
涙を堪えて潤む瞳。
ユノはそっと顔の泥を拭いて取った。
「・・・我慢しなくてもいいよ、辛かったでしょ？」
ユノの言葉にAの表情が崩れ、涙が落ちる。
タオルで顔を覆い泣くAをユノはそっと抱きしめて背中をさすった。
店の奥からその様子を見ていた啓太は、また奥へと消えた。
しばらく背中をポンポンしているとAも落ち着いてきた。
「・・・ごめんなさい」
離れるA。
「大丈夫？」
「・・・はい」
そこへ啓太が戻って来た。
「Aちゃん、腕見せて」
腕の擦り傷をキレイにして消毒する。
「あ、これ僕のだから大きすぎると思うけど、上だけでも着替えて」
「・・・すみません」
啓太に借りたトレーナーに着替えたAが店の奥から出て来る。
ダボダボな状態のAが恥ずかしそうに立つ。
「ふっ・・」
軽く吹きだす啓太とユノ。
少し場が和んだ。
「さて・・、その恰好でバスには乗れないよね？いつまでもそのままじゃ風邪もひくし・・。
やっぱり、イル君に連絡してイル君の家に行くのが1番だと、僕は思うけど」
「・・・でも・・」
決断出来ずに迷うA。
「僕が送って行きます、車なんで」
ユノが言った。
「！？」
「君はAちゃんとどういう関係なの？」
「友人です。ユノと言います」
啓太がユノを品定めするかのようにみつめる。
「ユノさん、そんな事出来ません」
Aが言うが、関係なく2人は見合っている。
「迷っているよりも、一刻も早く帰った方がいいかと思います」
「でも・・」
「Aちゃん、イル君に知られたくないなら、そうするしかないよ、どうする？」
Aがユノを見上げると、ユノは微笑んで見せた。
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作者名：カホル | 作成日時：2020年6月16日 20時
