With you （続 birdcage） (ページ5)

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噂　２ページ5

「ぁは、誰か見てるといけないし・・。遅れちゃうから、ごめんなさいー」

いかにも取り繕っている風なAを、イルは怪しんだ。

逃げる様に裏口から入ったAは、とりあえずイルに会わない様にトイレに駆け込んだ。

(どうしよう・・・なんで・・)

まさか自分が、イルの手を避けるなんて！

自分の取った行動に動揺していた。

理由はわかっているけど、イルにそんな態度とるなんて・・・

Aは鼻が利くので匂いに敏感だった。

車から降りて来たイル、いつもとは違う香水の匂いを感じ取り、言葉が途切れた。

昨日、あの女性が通った通路の残り香・・・

(どうして？・・どうして？)

頭も心も混乱していた。

なんとかトイレを抜け出し控室へ向かうと、中から話し声が聞こえてきた。

ミナの声と、アルバイトの女の子の声。

「ミナさん、聞きました？昨日、店長の元カノが来たんですよ」

「！」

Aは中へ入ることが出来なくなり立ち尽くす。

「知らない、今来たところだし。・・・てか、それホントに元カノなの？」

「厨房の田中さんが言ってたから本当みたいですよ」

「あぁ、オープン当時からいるって言ってたね、田中さん」

「綺麗で大人の女性って感じでお似合いでした」

「あ、そ」

ミナはウンザリして控室を出ようとドアを開けた。

「今カノがAさんって本当ですか？タイプが全然違う・・・！」

ドアの前、立ち尽くすAに気づく2人。

「・・あ、私、お先に失礼しまーす」

アルバイトの女の子が逃げるように裏口を出て行く。

ため息をつくミナ。

「・・気にしないで。ほら、仕事、仕事」

肩をポンと叩いて行くミナに、口元で微笑んで見せるA。

胸のザワザワが少しずつ大きくなり、不安感を強めていく。

━仕事はなんとかそつなく終えた。

イルも忙しいのか店長室からあまり出て来なかったので助かったが・・・

さて、帰る挨拶に困った。

会いたくないとか、話がしたくないとかではなく、ただドアを開けるのが怖かった。

中に入って、もし、またあの香水の匂いを感じてしまったら・・・

ドアに手を伸ばす。

「・・・・・」

どうしてもドアに触れる事が出来ずに手をギュッと握り締めAは控室へと入った。

そして鞄を手に裏口を出て、バス停へと急ぐ。

バス停に着くとイルへメールを送った。

「ごめんなさい、少し体調が良くないので、挨拶しないで帰ります。心配しないで」

息を整えバスを待っていると携帯が鳴った。