With you （続 birdcage） (ページ20)

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～回想～　店長室での会話ページ20

「別れましょうってメモだけを部屋に残していなくなった。
　連絡も取れなくなって、どこにいるのかもわからず、僕に出来る事は何もなく、
　ただ待つしか出来なかった。そうして時間だけが過ぎて行った」

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━「イル・・、あの時は突然いなくなって、ごめんなさい」

口にしたコーヒーカップをテーブルに置き、美咲は話し始めた。

「あの時、もうどうしたらいいのかわからなくなって、
　だけど結局、私が何をしたって無駄、私にはどうする事も出来ないんだってわかったの。
　親への反発もあったけど、ただ、逃げたかったの、何もかもから・・・」

神妙な面持ちで美咲の話を聞くイル。

「どこに、いたの？」

「外国・・・。しばらくは自堕落な生活を送ってたけど、インテリアの勉強を始めたわ。
　結局、親の敷いたレールの上を走る事になった」

「・・・僕は、ずっと待っていたんだ、美咲が戻って来る事を・・・。
　せめて連絡くらい、してくれても良かったんじゃないの？」

「出来なかった・・。どうせ未来が無いのなら、イルから離れるべきだと思った。
　話をしてキチンと別れるなんて事も、私には出来なかった。
　とにかく、逃げるしか出来なかった、・・・私が、揺れてしまうから」

「・・・・・」

「本当にごめんなさい・・」

「勝手にいなくなって、こんなお願いしに来るなんて図々しいわよね。
　だけど、大好きなお祖母ちゃんに、唯一、私達を応援してくれたお祖母ちゃんの
　願いを、どうしても叶えてあげたいの。お願い、イル、手伝って・・・」

固い表情のイルの脳裏にAが浮かんだ。

「・・・わかった、協力するよ。お祖母さんには僕も良くして貰ったから」

「ありがとう！イル」

あの頃と変わらない笑顔を見せる美咲に、イルの心も複雑に揺れた。

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もう会う事は無いのだろうと思っていた。

それが突然目の前に現れ、動揺しないはずがない。

かつて愛し合った人なのだから・・・

だけどそれはもう過去の事なのだ。

未練の様に心に残っているのは、きちんと別れる事が出来なかったからだ。

この件で区切りをつけ、辛い別れの記憶を塗り替えたい。

そして、未来だけをみつめていきたい。

Aとの未来を・・・

イルはそう考えた。