ユノとイル １ ページ15
いけないと思いつつユノは、Aの隣でしばらくAをみつめていた。
Aがユノのシャツを掴んでいる事を言い訳にして・・・
・・・と、Aのスマホから着信メロディーが流れた。
ユノはAを起こさないようにとシャツを掴む手をそっと外し起き上がる。
そしてスマホの元へ向かい手に取ると、画面には「イル」の文字。
「・・・・・」
迷いつつもユノは通話を選択した。
「もしもし？A？」
イルの声が響く。
「もしもし？」
返事がないので不審に思うイル。
「もしもし・・」
意を決してユノは応えた。
「！？ 誰？」
「ユノです」
「！？ なんでユノさんが！？Aは？」
「Aちゃんは、酔って寝ています」
「え！？ どういう事！？ そこはどこですか？」
「Aちゃんの部屋です」
「どうしてユノさんがAの部屋にいるんですか！？Aに何かしたんですか！？」
イルは半分怒って興奮しているようだった。
・・・・「イル？」
その時、電話の向こうからイルを呼ぶ女性の声が聞こえた。
「！」
くぐもった会話が聞こえ、少しして元に戻った。
「ユノさん、説明して貰えますか？」
「イルさん、イルさんこそ、どこで何してるんですか？誰といるんですか？
僕に、何かしたのか聞くよりも先に、Aちゃんに何かあったのかと心配するべき
じゃないんですか？」
「！ 何か、あったんですか？」
「電話をした時に酔ってる状態のAちゃんが心配で様子を見に来ました。
だけどAちゃんは僕ではなく、イルさんが来たと勘違いしているようでした。
何度も名前を呼んで・・・泣いてました」
イルは言葉を失った。
「Aちゃんはとても傷ついているんです。今、そばにいて欲しいのはイルさんなのに
イルさんを思ってそれを言えないでいるんです」
「・・・・・」
「イルさん、さっきの女性は誰ですか？一緒にいるんですか？」
「それは・・・」
「僕が電話に出て良かったです。Aちゃんに知られずに済んだから・・」
沈黙が流れた。
「ユノさん、Aに何があったんですか？教えてください」
「僕からは言えません。どこにいるのか知りませんが、早く戻って、直接聞いてください」
「・・・・・」
「あ、それから僕、朝までここにいますんで
イルさんもAちゃんの不安を感じてみてください」
「え！？ ユノさん？」
「何もしませんからご心配なく」
電話が切れイルは茫然とした。
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作者名：カホル | 作成日時：2020年6月16日 20時
