安穏 ページ1
あれから２か月。
悪夢を見ることもほとんど無くなり、穏やかな日々。
今日も店へ向かうためのバスに乗り、空いている席に座る。
少しだけ変わった事は・・・
「こんにちわ」
後ろから声をかけられ振り返る。
「あ、ユノさん、こんにちわ」
「久しぶりだね」
微笑んだユノが隣に座った。
「これから仕事？」
「はい。ユノさん、怪我の具合どうですか？」
「会うと必ずそう聞くよね？もっと他の事聞いて欲しいなぁ、僕のプライベートについてとか」
「え？・・あ、すみません、心配で」
戸惑うAを見て楽しそうなユノ。
「冗談。もう、これも取れそうだから」
ユノはそう言ってギプスのついた右手を上げて見せた。
「そうなんですか？良かった」
嬉しそうに笑顔を見せたA。
━胸がドクリとするユノ。
無邪気なAの笑顔に、切なさの混ざる愛おしさを感じる。
「あ、私、次で降りないと」
「ああ、気を付けて・・」
１度立ってAを座席から出すと、その後ろ姿を見守る。
バスのドアが閉まり動き出し、歩いて行くAに手を振るとAが会釈をした。
ユノは後姿を少し見送ると、再び座席に腰を下ろす。
イルの存在は理解している。
だけど、少し苦しい想い・・・
・
・
・
Aは少しドキドキしながら店へと歩いていた。
ユノといると緊張してしまう。
スラリと背も高いイケメンなので、周りの視線が集まって来るからだ。
夢の中での出来事・・・あれは夢、ただの夢の中の事だからと自分に言い聞かせてはいるが、
やはりどこか意識してしまう自分もいて・・・
何も無かったかの様な顔をしているつもりだが、ちゃんと出来てるだろうか？
「Aちゃん」
「はぅっ！」
名前を呼ばれたと同時に大きな塊にぶつかった。
その反動でよろけるAの腕をガッシリと掴んだのは
「啓太さん・・」
「大丈夫？ちゃんと前見て歩かないと」
「すみません」
「Aちゃん、考え事は家に帰ってからしてくれない？危なっかしいから」
「・・ごめんなさい。啓太さんは大丈夫ですか？」
啓太が何故か、Aのずっと後の方へと視線を送った。
「？」
Aがキョトンとして啓太を見る。
「ん？ ああ、僕はノーダメージだから大丈夫。それよりもAちゃんに怪我でもさせたら
イル君に怒られちゃうからさ」
「またぁ//// やめてください〜」
Aが啓太の二の腕をパシパシ叩いた。
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作者名：カホル | 作成日時：2020年6月16日 20時
