雨と目薬が始まりでした。tkin etc.

シーキャンドルとヨットハーバー 1 ページ30

…
side・in


「うわぁ〜すごいねぇ〜…」

「寒くない？」

「うん。大丈夫」


ライトアップされた展望台が凄く綺麗で、眼下に広がる夜景も一緒になって、まるで俺の心を癒してくれてるよう。







あのウェデングイベントが結構好評で、また手伝いをして欲しいって言われて。

今度は少し打ち合わせをしたいからって、仕事帰り高木に式場に連れてこられた。

夕飯は奢るからって言われたから、それならいいかっておもって。

ホイホイついてきたのがいけなかったな。





ロビーをぬけると庭にある小さなチャペルが見えた。


「あれ？結婚式？平日の夕方から？」

「アァ、ひと組だけね。なんでも新婦の誕生日だそうで」

「へぇ〜。二重に嬉しいねぇ。ロマンチックだねぇ。ねぇ、高木？」

「そうだねぇ」

「教会から出てくる時、フラワーシャワーするから、どう？やってみない？」

「え？いいんですか？やりたいーー」

「うんうん。おれもしたい！」



参列者が少ないからスタッフでお祝いしてあげようとしてて、それなら俺達もいれば賑やかになるだろうからって。

そこで断ればよかったんだ。
そうすれば。






"わー！きれい！"
"あの花嫁さん、かわいいー"

キャッキャッしながら
花びらを撒いてる若いスタッフたち。


俺らも真似てカゴから花びらをとって
まこうとしたんだ。

だけど、そこにいた新郎の顔みて固まっちゃった。


だって、そこにいたのは…







薮なんだもん。

ずっとずっと好きで
ずっとずっと忘れられない人で

俺の初恋の人なんだもん。



薮がパートナーを決めたことは知ってたけど

だから俺、失恋したんだけど


だけど

こんなふうに会いたくなかった。

そんな幸せそうな顔、みたくなかった。

俺には見せたことがない笑顔。


一瞬、目が合ってしまってその場から走って逃げた。

ほんとは顔見たかったのに…
ほんとはおめでとうって言いたかったのに…

でも、現実見ちゃうとそんな勇気なくて。


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