雨と目薬が始まりでした。tkin etc.

雨と目薬 1 ページ1

…

うっわ！マジかー


外回りを終えあと少しで社に着くって頃、いきなり大粒の雨が降り出した。

生憎、傘もなく、雨宿りができるようなところも見つからず、びしょ濡れになりながら走って社に戻った。






「ぎゃっ」
「うおっ！」
どすんっ！



俺が前を見てなかったせいで、給湯室から出てきた人に思い切りぶつかってしまい、押し倒す形になってしまった。



「あ、いのおく？」

「なん、だ。チャラ男か」

「チャラ男はないでしょ〜」

「早く退けよ、あーあーびしょ濡れじゃんかぁ」

「うわわっ！ごめん！」


俺が押し倒したせいで、伊野尾くんのシャツまで濡らしてしまった。

まったくなーってブツブツ言いながらも、ほらってタオルを渡してくれる伊野尾くん。

優しいな。



「ありがとう。ごめんねー、伊野尾くんも濡れちゃったね〜」

「いいよ。……大丈夫」


って言った彼のほおが少し塗れてるのは、びしょ濡れの俺がぶつかったせいだけなのかな？






隣の部署の伊野尾くん。
可愛い子が入ってきたって有名になってて、俺も仕事をほっぽり出して覗きに行ったことあったな。

顔のわりに毒舌で、仕事もバリバリこなしちゃう彼のギャップが余計に気になる存在だった。


そんな彼がつい最近、長年片思いしていた人にパートナーが出来て、告白しないまま失恋した、と噂好きの有岡くんから聞かされていた。


会社ではそんな素振りをみせずに、いつもと変わらず黙々と仕事をこなしてる伊野尾くん。


有岡くんから聞いてしまったせいもあるけど、あの綺麗な顔が歪む日があるのかな？と気になってつい目で追ってしまっていた。



いつもの癖でつい、じっと見入ってしまったら
少しだけ彼の目が赤くなっていることに気づいた。






…

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す