りょんの世界〜不定期短編集〜

HOLIC〜図書室編〜 ページ34

今でもはっきり覚えとる
あの日の事



HOLIC〜図書室編〜




高校教師んなって初めて役職つかしてもろて
はりきっとったんもある
まぁ体育教師いうんも要因のひとつかもな


村「はぁ、はぁ、はぁ…」


ストレスと過労が原因か？

人生初の過呼吸に若干焦ったんは確かや


ただそんなんよりも
弱い自分を生徒に見せられへんって方が上回って保健室やなくてひと気のない図書室を逃げ場所に選んだ


村「はぁ、はぁ、こらぁ、はぁ、あかんな…」


過呼吸で死なんって事くらい知っとる

せやけど、予想以上にしんどい
こない息できひんもんなんやな

対処法方も頭には入っとるが
なんせ急やったし

紙袋なんか持ってるはずもない


取りあえず自分の服に口元押し当てて
なんとか呼吸を整えようと必死やった


自分が思てるより余裕なかってんなぁ

先客居ったんに気づかんかったんやから


「先せ…？」


村「っ!」


図書室の奥でへたりこんでたんを
後ろから声かけられて、死ぬほどビビった


村「はぁ、はぁ、な…、はぁ、お前…」


声がうまいこと出ぇへんくて
終いには目の前までボヤけ出した


村「はぁ、はぁ、はぁ…」


先生言うてるくらいやから生徒やんな…？

マズイとこ見られてもうたわ…

口止めしとかなこん位の年齢のヤツらの情報伝達力はハンパないからな…


村「はぁ、はぁ…だまっ、はぁ、とけ…よ」


そんな簡単な言葉さえしんどかった

誰かもわからん以上、余計な事言われへんし
誰か呼ばれても面倒やし


今はこん過呼吸なんとかせな…



っ!!



「ゆっくり、息して？」



な…

何……？



「苦しいかもしれへんけど、なるだけゆっくり」



ゆっ…くり…



「うん、上手」


整いはじめた呼吸と平行して頭ん中も整理がついてきた



俺は今…


誰かに抱きしめられて…


ソイツの胸ん中で…


息しとるんや…って

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