【男主】涙でにじむ約束は Ⅴ (ページ5)

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何もできないページ5

岩本side

Aのことは気にしていたつもりだった。

それでも気づいたときには、
Aは血の気の引いた顔色でうつむいていた。

岩本「A！」

A「だい、じょうぶ……」

どっからどう見ても大丈夫なわけないのに
Aはぎゅっと閉じていた目を微かに開けて言った。

めまいでもするのか、すぐにまた
眉間にしわを寄せて顔を伏せた。

みんなも気付いたみたいで、
俺とAの周りに集まってきた。

こんなとき、どうすればいいのか
分からない。

大切な人が目の前で苦しんでるのに、
俺には何もできない。

自分の無力さに、悔しさを感じたときだった。

阿部「A、無理してしゃべらなくていいから
答えられそうだったら教えて」

阿部がAの顔を覗き込んだ。

阿部「今何が苦しい？」

A「めまい、して、気持ち悪い……」

阿部「吐きそうな感じある？」

Aは小さく首を振った。

阿部「胸ドキドキしてる？」

A「してるっ……」

阿部「痛いところは？」

A「頭……でも、そこまでじゃ……」

阿部「分かった、ごめんね。
しんどいのにしゃべらせて。
ちょっと横になろっか、ソファーまで歩けそう？」

A「……うん、ごめん」

阿部「大丈夫だよ、今は自分のことだけ考えて」