【男主】涙でにじむ約束は Ⅳ (ページ6)

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何よりも大切なのはページ6

佐久間side

感情が押し込められたAの手を
さっきまで掴んでいた右手に、
まだ微かに痺れが残っている。

あんな力で壁殴ったら怪我するかもしれないって
絶対にAは分かってるはずなのに。

それに人や物に当たるなんて、
出会ってから一度だって見たことがない。

よっぽど抑え切れない感情があるはずなのに、
「起こしちゃった？」なんて
ぎこちない笑顔で笑うのが少し寂しくて、
でも、Aらしいなって思った。

そんなAだから、
自分から幕を下ろすなんてことができないのは
よく分かる。

だから……

佐久間「舞台、中止にしてもらおう」

俺が、下ろす。

Aのせいじゃなく、
俺の、勝手な判断で。

Aが責めるのは、自分自身じゃなくていい。
その矛先は、俺が全部受け止める。

ファンの落胆も、
大千秋楽を迎えられなかった負の事実も、
メンバーや後輩たち、スタッフさんの無念も、
全部、全部俺が受け止めてやる。

何よりも大切なのはAの身体だから。

A「ちょっ、と、待てよっ……」

Aの声は震えていた。

阿部「なに、どうしたの？」

物音で阿部ちゃんも起きたみたいで、
まだ寝癖のついている頭で扉をのぞきこんできた。