【男主】涙でにじむ約束は Ⅳ (ページ35)

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変わらないページ35

深澤side

昔から本当に変わらない、
Aの強くて弱いところ。

強がりで、苦しいことも１人で抱え込んでしまう。

後輩が先にデビューしたときだってそうだった。

今から数年前、俺たちより何年も下の後輩が
デビューすることをテレビで知った。

もちろん一緒に頑張ってきた仲間が
新しい舞台に羽ばたいていくのは
嬉しくはあった。

けど、悔しかった。

もしかしたらこのままデビュー
できないんじゃないかって。

不安と、悔しさと、嫉妬。

いろんな感情が渦巻いて、
素直におめでとうって笑える気がしなかった。

そんな良くないタイミングで、
事務所の廊下の曲がり角の先から
今度デビューの決まったグループの
みんなの声が聞こえてきた。

別に逃げることなんてないのに
無意識にすぐそばにあったトイレに
逃げ込んでしまった。

何やってんだよ、先輩ならちゃんと
おめでとうって言ってやれよ。

自分の心の狭さにうんざりしたときだった。

A「おー！！ちょっと！！
ニュース見たよ！！」

外から聞こえてきたのはAの声だった。

そっと顔を出すと後輩たちが固い表情を
浮かべているのが見えた。

メンバーの中にはAを慕っている子もいて、
追い越してしまったことでどういう顔をして
Aと話していいのか分からなかったんだと思う。

そんな気遣いでさえ、胸をえぐってくる。

後輩１「Aくん……そのっ！」

何かを言おうとした後輩の言葉が止まった。

A「おめでとう！！本当すげぇよみんな！！」

Aがその子たちを笑って抱きしめたから。