【男主】涙でにじむ約束は Ⅳ (ページ33)

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距離ページ33

深澤side

みんなと別れて１人になった帰り道。

頭から消えないのはAのことだった。

舞台上で見せたあの涙。

そんなことがウソだったみたいに
別れる寸前までみんなと笑っていた。

いつもみたいなわちゃわちゃした雰囲気だったのに
なぜかAの笑顔が、
今にも消えてしまいそうに儚く見えた。

今、Aを１人にしちゃいけない。

そんな気がしてAのマンションへ向かった。

深澤「え……」

Aの部屋には何度か遊びに来たことがある。

外から見たAの部屋はまだ真っ暗だった。

もう家についてるはずなのに。

スマホを取り出して電話を掛けると
すぐにAに繋がった。

安心したのも一瞬で、
Aの声がいつもと違っていることに気がついた。

いつもよりほんの少しだけ高いAの声。

辛いことがあっても俺たちに悟られないように
隠しているときのAの癖だった。

強がりで、意地っ張りなAだから
きっと直接会ってしまったら
また頑張っちゃうだろうから。

本当はもっと近くで話したいけど、
今だけはこの距離でいい。

離れているからこそ、
吐き出せる感情もあるだろうから。

深澤「なぁA」

A「ん？」

ベランダの柵にもたれかかるA。

少し遠いけれど、声はすぐそばで聞こえる。

深澤「ありがとな。一緒にいてくれて」