【男主】涙でにじむ約束は Ⅳ (ページ17)

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きっと、ラストページ17

Aside

あと何回この景色を見ることができるんだろう。

舞台の上では阿部ちゃんと翔太が
絶妙な掛け合いを繰り広げている。

舞台袖で俺はもうすぐやってくる出番を
待っていた。

空席が一つもない客席。

そこで俺たちの歌や演技に
笑って、泣いて、楽しんでくれているお客さんたち。

この時間が当たり前で、
ずっと続くと信じていた。

けどそれは当たり前なんかじゃないことを
知るにはあまりにも遅すぎた。

本当、バカだな。

自分の愚かさに笑えてくる。

それでも何よりも今感じているのは
舞台に立てる喜びだった。

みんなと一緒に立てることの幸せを噛み締める。

阿部「A、大丈夫？」

演技を終えた阿部ちゃんと翔太が
舞台袖にはけてきた。

A「うん、ばっちりだよ」

渡辺「ぶちかましてこい。
何があっても助けてやるから」

翔太が俺の肩を叩いた。

A「って！」

ちょっぴり痛くて、
けど心強い力だった。

A「ありがと！行ってくる！」

俺は２人にガッツポーズを向けた。

ステージに立つと感じる独特の緊張感。

セットのペンキのにおい、
スポットライトの輝き、
足に伝わる板の硬さ、
お客さんの期待のこもった視線、
スタッフさんの思い、
俺を信じて見守ってくれているメンバー、

その全ての大切さと感謝が
心と身体に広がっていく。

これが、きっと俺の最後の滝沢歌舞伎だ。

全てを込めたセリフが、
会場に響き渡った。