救世主 ページ11
阿部side
阿部「ううん、なんでもない」
ふと口に出てしまった言葉を
誤魔化した。
阿部「佐久間の本当の気持ちはAもちゃんと
知ってるとは思うけどさ、
やっぱり言葉にして話した方がいいよ。
このままじゃ、気まずいままでしょ？」
佐久間が一瞬黙った。
けどすぐに息を一つ吐いて立ち上がった。
佐久間「そうだね。
俺もちょっと言い過ぎたかも」
阿部「ま、Aも無茶するからね。
佐久間も間違ってないよ」
佐久間「……うん。ありがとう」
２人で元来た道を戻って部屋の前に着いた。
オートロックなのに鍵も持たずに
出てきちゃったことを思い出して
インターホンを鳴らした。
向井「おかえり」
康二が妙に小さい声でそう言いながら
ドアを開けてくれた。
阿部「どしたの？ 何かあった？」
康二は人差し指を口に当てながら
俺たちに部屋に入るように目で合図した。
佐久間「え……？」
佐久間の戸惑う声が漏れた。
俺も一緒だ。
まず目に入ってきたのは、
ベッドの中で目を閉じているAの姿。
それから腕から伸びる管と
壁にかけられた点滴の袋。
阿部「どういうこと？」
この短時間で何があった？
みんなの顔を見回すと、
部屋の奥の椅子にいるメンバーじゃない男の人が
目に入ってきた。
阿部「誰……？」
ラウ「Aくんのお医者さん」
佐久間「え？」
男性「お会いするのは２回目ですね」
その人は立ち上がって、
俺たちに向かって微笑んだ。
立花「雪村さんの担当医の立花と申します」
阿部「あっ……！」
そうだ、どこかで見覚えがあると思ったんだ。
Aが倒れたって聞いて病院に行ったときに
確かこの先生がいた気がする。
けど、どうして……
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作者名：くらげ
| 作成日時：2022年3月13日 6時
