目の前のラスト ページ1
阿部side
Aの意地なのかプライドなのか、
滝沢歌舞伎は稽古も本番も無事に今日まで
やり抜いてきた。
残すところもあと１日。
舞台を終えた後、明日の大千穐楽に向けて
身体をケアしてもらって
用意されたホテルに帰ることになった。
今回は俺と佐久間とAが同じ部屋。
佐久間「あぁー！
もう明日で終わっちゃうよー！？」
部屋に入った瞬間、佐久間が叫びながら
ベッドにダイブした。
阿部「毎年思うけど、終わりが近づくと
あっという間だよね」
A「……ほんとそうだね」
Aの声に、疲れがにじんでいた。
佐久間「A、さすがに疲れたでしょ？」
佐久間も気になったみたいで、
Aにそんなことを聞いた。
A「大丈夫だよ。
まぁ念のために早めに休もうかなとは
思ってるけど」
阿部「明日全力出すためにもその方がいいかもね」
俺がそう言うと、Aはふっと微笑んだ。
……なんだろう、この違和感。
A「手洗ってくる」
Aが俺の隣をすり抜けようとしたとき、
ふらっとAの身体が傾いた。
阿部「…………！」
とっさにAの身体を抱きとめた。
A「ごめんごめん、結構足にきてるっぽい」
ちょっと待って……。
腕に伝わってくるのは、確かな熱さ。
顔を上げたAの目は、
うっすら赤く潤んでいた。
阿部「A、いつからなの……？」
Aの顔から笑みが消えた。
佐久間「……阿部ちゃん？」
Aの額に手を当てた。
阿部「……熱、あるよね？」
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作者名：くらげ
| 作成日時：2022年3月13日 6時
