【男主】涙でにじむ約束は Ⅲ (ページ48)

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Aside

A「なんだ、せっかくカッコつけたのに
照とふっかがバラしてたんだ」

懐かしい思い出話だった。

照とふっかには俺の口実はあっさりと
見破られていたらしい。

向井「え、知らんかったん？」

A「全く。まぁ、別にいいんだけどね」

向井「でもあのときAくんに
助けてもらってなかったら、
もしかしたら潰れてたかもしらんなぁ」

A「どうかなぁ。康二のことだから
自分で立ち直ってたかもしんないよ？」

向井「どっちにしても俺がAくんの言葉に
救われたんは事実やから。
ほんまにありがとう」

A「なんだよ今さら！」

頭まで下げてきた康二に、思わず笑ってしまった。

向井「あのときのお返しじゃないけど、
今日はゆっくりしていってな？

Aくんは何もしたらあかんで？
ただダラダラのんびりするのが
俺んちいてる間のAくんのミッションやから！」

A「ミッションって……」

そう言って康二は夕飯の用意を始めた。

もちろん俺にはただ座っているように命じて。

あのとき子どもみたいに
泣きじゃくっていた康二は、
いつの間にこんなに頼れるメンバーに
なっていたんだろう。

康二なら、誰かが何かに悩まされていても
きっとすぐに気がついて、
その明るさと優しさで包みこんでくれるはずだ。

もし、俺がいなくなっても、
きっと康二がみんなに寄り添ってくれる。

A「みんなのこと頼んだよ、康二」

キッチンに立つ康二の背中に伝えた。

向井「ん？なんか言った？」

A「ううん、なにも」

野菜を洗っていた康二には、
俺の言葉は水の音にかき消されて
聞こえなかったみたいだった。

でも、今はそれでもいい。

優しい分、繊細で傷つきやすい康二には
今の言葉は『さよなら』に聞こえてしまうかも
しれないから。