【男主】涙でにじむ約束は Ⅲ (ページ47)

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優しい嘘ページ47

向井side

深澤「ねぇ康二、最近なんかあったの？」

レッスンの休憩中、ふっかさんと照兄が
俺の近くに座った。

向井「なんかって？」

岩本「いい感じに力抜けた気がするなって
話してたんだよ」

深澤「そうそう、前まで結構ガチガチだったからさ」

自分では気持ちは変わったとは思ってたけど、
周りから見てて変わるくらいやとは
思ってなかった。

きっとそれはAくんのおかげ。

向井「Aくんが話聞いてくれて」

深澤「なるほどねぇ」

岩本「あいつに話聞いてもらうと
結構楽になるときはあるよな」

深澤「分かる。心の浄化能力ハンパないよ」

岩本「Aが誘ってくれたの？」

向井「もともと目覚まし要員で家に呼ばれて
そのときに話聞いてもらいました」

深澤「目覚まし要員？」

向井「緊張する現場があって、
寝過ごすのが怖いから
泊まって起こしてって言われて」

俺がそう言うと２人は顔を見合わせた。

向井「どうしたんですか？」

深澤「ふぅん、Aらしいな」

岩本「そういうことか」

向井「え？」

深澤「それね、多分康二を誘うための
口実だよ」

向井「口実？」

岩本「Aの名誉のために言うけどね、
Aって１回も遅刻したことないんだよ」

深澤「そうそう、前日がどれだけ仕事が遅くても
次の日早い日でも遅れたことなんてない。
めちゃくちゃ飲んだ次の日だって
けろっとして仕事来るからね。
目覚まし要員なんて必要ないんだよ？」

向井「だったらなんで……」

岩本「シンプルに心配だったんじゃない？
で、少しでも気、使わずに来てもらうために
そんな口実つくったんでしょ」

深澤「優しいんだよ、ほんと昔から。
あの優しさ、もうちょっと自分に向けてくれても
いいのになぁ。
A自身には見てるこっちが引くほど厳しいから」

阿部ちゃんと振り付けの確認をしているAくんは
昨日よりもずっと輝いて見えた。

あまりにも存在が大きすぎて、
Aくんみたいには永遠になられへん気がした。

それでもいい。

ただ、Aくんの支えくらいにはなりたい。

そう強く思ったのは、今でもはっきり
覚えてる。